平和大橋 (広島市)

平和大橋：復興と平和のシンボル

広島市の中心部を流れる元安川に架かる平和大橋は、単なる交通路を超えた、広島の記憶と平和への願いを象徴する歴史的建造物です。1945年の原子爆弾投下により、前身である「新橋」が破壊された跡に、1952年に再建されました。特徴的なデザインの欄干は、日系アメリカ人彫刻家イサム・ノグチによるもので、橋全体のデザインに独特の風格を与えています。2019年には、交通渋滞の緩和と歩行者・自転車の通行の安全を確保するため、歩道橋が併設されました。

戦前からの歴史：幾多の災害を乗り越えて

元安川には、江戸時代には防犯上の理由から橋が架けられていませんでした。明治時代に入り架橋規制が解除されると、現在の平和大橋よりやや上流に「新橋」という木橋が架けられました。しかし、1919年の洪水で落橋、その後も水害により損傷を繰り返しました。太平洋戦争中の1943年には、現在の位置に「（仮）新橋」が架け替えられましたが、1945年の原爆投下で甚大な被害を受け、再び渡ることができなくなりました。

戦後の復興：平和への願いを込めて

戦後、広島市の復興計画の一環として、平和大橋の再建が決定されました。建設省の直轄事業として進められ、1950年に着工、1952年に竣工しました。橋の名称は一般公募により決定されました。イサム・ノグチによる欄干のデザインは、平和記念公園の景観と調和し、戦後の復興と平和への願いを込めたものです。当初は石造りの予定でしたが、予算の都合でコンクリートに変更され、その後、欄干の高さが低いことから安全性が懸念され、嵩上げ工事が行われました。

イサム・ノグチの欄干デザイン：平和へのメッセージ

ノグチは、広島平和記念施設のデザインを手掛けた丹下健三の依頼により、平和大橋の欄干のデザインを担当しました。彼は、原子爆弾を落とした国の人間としての罪悪感を抱きながら、日米の血を引く者として広島で平和共存の夢を託す仕事がしたいと考えていました。彼のデザインは、単純な装飾ではなく、平和への願いと、生命の尊さ、そして死生観を表現したものとして高く評価されています。

歩道橋の建設：新たな機能とデザイン

近年、平和大橋周辺の交通渋滞の緩和と歩行者・自転車の通行安全性の向上を目的に、歩道橋の建設が計画されました。この計画では、国際的なデザインコンペが開催され、国内外から多くの応募がありました。最終的に、現在の歩道橋のデザインが採用され、2019年に完成しました。この歩道橋は、平和大橋の欄干と調和したデザインとなっており、機能性と美しさを兼ね備えています。

平和大橋の諸元

路線名: 広島市道比治山庚午線（平和大通り）
橋長: 85.56m
支間長: [email protected]
幅員: 15m
上部工: 4径間単純鋼鈑桁橋（全溶接）
下部工: RC重力式橋台2基、RCラーメン橋脚3基
設計: 建設省中国四国地方建設局
施工: 上部工 - 横河橋梁、下部工 - 松村組

平和大橋の評価：賛否両論を経て

平和大橋は、斬新なデザインとノグチの名声から国内外で注目を集めましたが、当初はデザインを巡る論争も起こりました。しかし、完成から年月を経て、現在では広島のランドマークとして、そして平和の象徴として、多くの人々に親しまれています。

今後の展望：更なる整備と保存

平和大橋は、今後も広島市の発展に貢献する重要な役割を担っていくでしょう。老朽化対策や交通状況の変化に対応した更なる整備が検討され、その歴史的価値を維持・保存していくための取り組みが続けられています。平和大橋は、単なる橋梁を超え、広島の歴史と平和への願いを未来へと繋ぐ重要な存在となっています。

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