平和駅 (北海道夕張市)

北海道夕張市平和にかつて存在した夕張鉄道線の駅、それが平和駅です。この駅は、単なる旅客輸送の拠点ではなく、地域の主要産業であった石炭鉱業を支える重要な役割を担っていました。特に、近隣に位置した北炭平和炭鉱から産出される石炭の積み出し拠点として機能し、夕張鉄道線の貨物輸送において中心的な役割を果たしていました。

平和駅の歴史は、昭和初期に遡ります。1938年（昭和13年）8月1日、この駅はまず貨物専用駅として開業しました。同時に、北炭平和炭鉱への専用鉄道も開通し、石炭輸送体制が確立されます。当初は貨物輸送に特化していましたが、開業から約20年後の1959年（昭和34年）7月1日には一般営業を開始し、旅客扱いも行うようになります。これにより、地域住民の生活の足としても機能するようになりました。

しかし、日本のエネルギー政策の転換や炭鉱の閉山といった社会情勢の変化は、石炭輸送に大きく依存していた鉄道にも影響を与えます。平和駅における旅客営業は、一般営業開始からわずか12年後の1971年（昭和46年）11月15日に廃止されました。その後、貨物駅としての機能は維持されますが、夕張鉄道線の経営状況も厳しくなります。1974年（昭和49年）4月1日には、夕張鉄道線が北海道炭礦汽船に譲渡され、平和駅も同社の駅となりました。そして、炭鉱の衰退と軌を一にするように、夕張鉄道線自体の廃止が決定されます。1975年（昭和50年）4月1日、夕張鉄道線の全線廃止に伴い、平和駅もその歴史に終止符を打ち、廃駅となりました。

駅の構造は、単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。営業期間中は終日駅員が配置されており、駅の運営や貨物取扱業務が行われていました。平和駅の最大の特徴の一つは、北炭平和炭鉱へ通じる専用鉄道がここから分岐していたことです。広大な構内では、専用鉄道からの石炭貨車や本線貨車の入れ換え作業が頻繁に行われ、その動力として蒸気機関車が活躍していました。これらの機関車が待機する姿は、当時の駅の賑わいを象徴していたと言えるでしょう。また、急勾配区間での補助として使用される補機用の蒸気機関車も、平和駅に待機していました。

駅周辺は、文字通り北炭平和炭鉱を中心に発展した地域でした。広大な炭鉱施設に加え、炭鉱労働者とその家族が暮らすための住宅地が広がっていました。炭鉱が活況を呈していた時代は、平和駅も活気にあふれ、多くの人や物が往来していたことでしょう。しかし、炭鉱の閉山に伴い、地域の様相は大きく変化しました。かつて炭鉱施設や住宅地が広がっていた跡地は、現在では運動公園として整備され、地域住民の憩いの場となっています。また、一部の炭鉱住宅は市営住宅として再利用されるなど、往時の名残を残しつつ、新たな形で地域に貢献しています。

夕張鉄道線における平和駅は、隣の錦沢駅と礦業所前駅の間に位置していました。炭鉱の発展とともに生まれ、その衰退とともに消えていった平和駅は、夕張の近代史、特に炭鉱を基盤とした地域の成り立ちと変遷を知る上で、重要な記憶の一部と言えるでしょう。物理的な駅舎や線路は姿を消しましたが、その歴史的な役割は、今も地域の記憶に刻まれています。

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