平宗清

平宗清：忠義と苦悩の生涯

平宗清は、平安時代後期に活躍した武将です。伊勢平氏の傍流に属し、平季宗を父に持ちます。彼は平頼盛の家臣として仕え、頼盛が尾張守に任じられた際にはその代理を務めました。

宗清の名が歴史に刻まれる出来事は、平治の乱に端を発します。乱に敗れた源頼朝は、美濃国で宗清によって捕らえられ、六波羅に送られました。興味深いことに、この際、頼盛の母である池禅尼を通じて頼朝の助命を嘆願したという記録が残されています。この行動は、宗清の複雑な心情、主君への忠義と同時に、敵対者へのある種の共感を示唆していると言えるでしょう。

その後、宗清は仁安元年（1166年）に正六位上右衛門少尉に、仁安3年（1169年）には左衛門権少尉に任ぜられました。さらに、後白河院の北面武士として仕え、院領であった大和国藤井庄（現在の奈良県山辺郡山添村付近）の管理も任されていました。この経歴からも、宗清が朝廷や有力者から信頼されていたことが分かります。

治承・寿永の乱で平家が都落ちした後、元暦元年（1184年）6月、源頼朝は宗清を恩人として、頼盛と共に鎌倉への招集をかけました。しかし、宗清はこれを断固拒否します。平家一門と共に屋島へ向かったのです。彼は、頼朝への恩義を感じながらも、武士としての義理と忠義を貫き、平家への忠誠を最後まで曲げなかったのです。頼朝は、頼盛から宗清が病気で遅れると聞いて、引出物を用意していただけに、宗清の不参加は大きな落胆を与えました。

宗清の子、家清は出家し、都落ちには同行しませんでした。しかし、元暦元年（1184年）7月、伊勢国で三日平氏の乱を起こします。これは、平家への忠誠心からであろうと推測されますが、この反乱は鎌倉方の軍勢によって鎮圧され、家清は討ち取られました。

平宗清の生涯は、忠義と苦悩、そして複雑な人間模様が織りなすドラマです。主君への忠誠心と、恩人への恩義のはざまで揺れ動きながらも、自らの信念を貫いた、まさに時代の波に翻弄された武将の一人と言えるでしょう。彼の生き様は、歴史に名を刻む多くの武将の中でも、特に注目に値するものです。

彼の物語は、歴史書だけでなく、歌舞伎『一谷嫩軍記』やNHK大河ドラマ『新・平家物語』（1972年）、『平清盛』（2012年）など、数々の作品で取り上げられ、現代においても人々の関心を集めています。これらの作品を通して、平宗清という人物像をより深く理解し、平安時代末期の動乱を改めて知ることができるでしょう。彼の行動や選択は、現代社会においても、忠義や責任、そして選択の難しさについて考えさせる、重要な教訓を与えてくれます。

参考文献

* 新日本古典文学大系43『保元物語 平治物語 承久記』（1992年、岩波書店）

もう一度検索