平川綾真智

平川 綾真智（ひらかわ あやまち）

1979年7月9日生まれ。鹿児島県鹿児島市出身の日本の詩人です。熊本大学文学部地域科学科社会学を卒業しました。2000年代からのインターネット上での詩の活動を積極的に行い、Webにおける詩の新しい流れをリードする一人として注目されています。また、「シュルレアリスムと音楽」という、これまであまり語られてこなかった分野の研究者としても知られています。

詩作活動と経歴

1996年に鹿児島県立鶴丸高等学校を退学した後、詩人の杢田瑛二に師事しました。当初は詩人として長く活動することに懐疑的で、「詩はすぐに書けなくなるだろう」と師に語り、詩学新人賞の推薦を二度辞退したエピソードがあります。

1999年には、テレビ番組「ニュースJAPAN」で特集が組まれ、詩作に取り組む姿や大学入学資格検定（大検）の受験の様子が放送され、その活動が広く紹介されました。2000年に熊本大学に入学すると、小説家の福島次郎と親交を結び、後に詩誌『詩と眞實』の同人となります。この頃から詩誌と並行して、パソコン通信時代から利用していたインターネット上でも詩の発表を始めました。

2002年、最初の詩集『市内二丁目のアパートで』を刊行。2006年頃からの商業詩誌の休刊や廃刊が相次ぐ中で、Webでの活動が脚光を浴びるようになり、インターネット上での詩の動向を牽引する存在となっていきました。

2009年に発表された第二詩集『202.』は、多くのメディアに取り上げられ、独特な句読点を用いたオリジナリティあふれる表現スタイルが高い評価を受けました。

研究活動と多様な展開

2015年には、国民文化祭「現代詩の祭典」の選者を務めるなど、詩壇での活動を広げます。同年、「シュルレアリスムと音楽」に関する研究論考の発表を開始。この研究は三つの詩誌にわたる長期連載となり、この分野における数少ない体系的な研究として注目されています。また、アンソロジー詩集『現代詩100周年』（TOLTA）において、日本の代表的な現代詩人100人の一人に選ばれました。

2016年の熊本地震での被災を経験したことは、その後の表現スタイルに大きな変化をもたらしました。大学時代から学んでいた声楽を活かし、熊本地震復興祈念コンサートに出演するなど、活動の幅を広げます。朗読の舞台にも積極的に参加し、2017年には日本で初めてとなるオンライン・ポエトリーオープンマイクを企画・主催しました。2018年には、国民文化祭「現代詩の朗読」企画で講師を務めるなど、朗読を通じた詩の普及にも貢献しています。

2020年からのコロナ禍においては、オンラインでのポエトリーオープンマイクの普及に努めると共に、オンライン配信イベントにも多数出演しました。

2021年、第三詩集『h-moll』が刊行されると、発売直後から大きな話題を呼び、『婦人公論』やYahoo!ニュースなどで書評が掲載されるなど、従来の詩の読者層を超えた広がりを見せました。詩集のリリースイベントには、伊藤比呂美や広瀬大志、宮尾節子といった著名な詩人や作家、さらにはVtuberが出演するなど、異分野との交流も積極的に行い、『現代詩手帖』でもその取り組みが大きく取り上げられました。ラジオ出演、野外フェス参加、音声コンテンツの活用など、その表現活動は多岐にわたります。

2022年7月には、和合亮一らとのユニット「#礫の楽音」として国際芸術祭「あいち2022」のオープニング・イベントに出演し、朗読と鼎談を組み合わせたパフォーマンスを披露しました。

「シュルレアリスムと音楽」研究

アンドレ・ブルトンによって始められたシュルレアリスム運動には音楽が含まれない、という定説に対して、その定説がどのように成立したのかを深く掘り下げて研究しています。「シュルレアリスム」という言葉を生み出したアポリネールや、音楽家のサティといった人物とシュルレアリスムとの関連性など、シュルレアリスムと音楽の関係について体系的に研究を行う、国内外でも非常に稀有な存在です。

その他の活動と特筆すべき点

日本現代詩人会webスタッフ、日本詩人クラブ会員、熊本文学隊隊員、「詩と真実」同人、詩誌『みなみのかぜ』所属、熊本県詩人会会員、近代文学舘友の会会員、熊本現代美術館朗読の夕べ参加メンバーなど、様々な文学関連団体に所属しています。また、インターネット上の文学ムーブメント「文学極道」の発起人の一人であり、第五代代表を務めました。「アイドル活動をした初めての詩人」や「ファンクラブが存在する日本初の詩人」としても知られており、ユニークな活動を展開しています。

和合亮一とikomaと共に結成したユニット「礫の楽音」は、初回配信が短期間で多くの視聴を集め、詩の新たな表現や届け方を模索する試みとしても注目されています。

著作

『市内2丁目のアパートで』(2002年、詩学社)
現代詩の新鋭シリーズ10『202.』（2009年、土曜美術社出版販売）
* 『h-moll』(2021年、思潮社)

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