平賀亀祐

平賀亀祐：海を渡り、世界を彩った画家

1889年、三重県志摩市に生まれた平賀亀祐は、幼い頃から絵画に深い関心を抱き、西洋絵画への憧れを募らせていました。漁師の家に生まれた彼は、家業を継ぐ道ではなく、画家としての道を歩むことを決意します。16歳という若さで、僅かな資金を携え、故郷を後にしました。

1906年、平賀は神戸港から船に乗り、アメリカへと渡ります。サンフランシスコに降り立った彼は、言葉の壁、文化の違い、そして経済的な困難に直面しながらも、持ち前の粘り強さと情熱で困難を乗り越えていきました。時計宝石店での見習いや漁師として働きながら、着実に資金を蓄え、サンフランシスコ美術学校へ入学します。

才能溢れる平賀は、在学中に頭角を現し、卒業制作では大賞を受賞。その後は、サンフランシスコ万国博覧会での日本館装飾や、各地の日本大使館内装といった重要な仕事を手掛けるようになります。アメリカでの成功は、彼の自信を高め、さらなる挑戦へと駆り立てました。

1925年、平賀は活動の場をヨーロッパに移し、フランス・パリへと渡ります。名門のアカデミー・ジュリアンに入学し、当時の巨匠たちから指導を受けました。パリでの生活は、彼の芸術家としての成長に大きく貢献します。

国民美術協会展への入選、サロン・ドートンヌへの出品など、彼の作品は次第に高い評価を得るようになり、個展は大成功を収めます。国民美術協会展では銅賞、銀賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝き、1954年には、コロー賞と日本人初の金賞を受賞するという快挙を達成しました。

フランスでの長期滞在を通して、アンドレ・ドラン、ジョルゴ・ブラック、パブロ・ピカソ、アメデオ・モディリアーニ、そして藤田嗣治ら、数々の巨匠たちと親交を深めました。彼らとの交流は、平賀の芸術観に大きな影響を与えたことは間違いありません。

50年に渡る海外生活の後、1955年、平賀は日本へ帰国します。しかし、彼の活躍はここで終わりませんでした。レジオンドヌール勲章を受勲するなど、フランス政府からもその功績を認められました。また、日本政府からも勲三等瑞宝章、紺綬褒章を受賞し、没後には勲三等旭日中綬章が追贈されています。

1971年、平賀亀祐はパリでその生涯を終えます。彼の死後、故郷の片田稲荷神社には記念碑が建立され、三重県志摩市には平賀亀祐記念館が建てられました。これらの施設は、彼の偉業と、日本とフランスの架け橋として活躍した彼の生涯を後世に伝える重要な役割を担っています。

平賀亀祐は、生粋の日本人でありながら、世界を舞台に活躍した稀有な画家でした。彼の芸術は、時代を超えて人々を魅了し続け、その功績は、今もなお多くの人々に敬意と称賛を集めています。彼の生涯は、才能と努力、そして国際的な交流がもたらす可能性を象徴する、輝かしい物語として語り継がれるでしょう。

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