平野侃三

平野 侃三（ひらの かんぞう）

1931年に生を受けた平野侃三氏は、日本の官僚、造園家、そして都市計画家として多岐にわたる分野で顕著な業績を残しました。長年にわたり、わが国の都市環境の整備や向上、さらには関連分野の教育において重要な役割を果たした人物です。東京農業大学の名誉教授でもあります。

東京大学を卒業後、1955年に建設省に入省し、そのキャリアを開始しました。当初は都市局の都市計画課に配属され、日本の戦後復興から高度経済成長期にかけての重要な都市計画策定に関わることになります。

建設省在任中、平野氏は都市計画だけでなく、都市の緑化や公園整備といった分野にも深く関与しました。都市局公園緑地課では、都市緑地対策室長を務め、急速な都市化が進む中で失われがちな緑地の保全や創出に向けた施策を推進する上で中心的な役割を担いました。また、国土庁では大都市圏整備局の整備課長として、首都圏をはじめとする主要な大都市圏の構造改善や機能強化に関する計画策定を主導しました。国の根幹に関わる都市政策の立案と実行において、幅広い知見と経験を発揮しました。さらに、公害防止事業団の常任顧問も務め、環境問題、特に公害対策としての緑地や空間整備の重要性を訴え、具体的な事業推進に関与しました。

長きにわたる行政官としての経験を経て、1986年に平野氏は教育者としての新たな道を歩み始めました。東京農業大学農学部の造園学科教授に就任し、その豊富な実務経験と学識を背景に、次世代を担う造園家や都市計画家の育成に力を注ぎました。多くの学生を指導し、教育現場においても多大な影響を与えました。

2002年3月、東京農業大学を定年により退官しましたが、その教育及び研究における長年の功績が称えられ、同年5月には東京農業大学名誉教授の称号が授与されました。

大学退官後も、平野氏の社会貢献活動は続きました。2002年6月には、公益財団法人都市緑化基金の理事長に就任し、都市における緑の重要性の啓発、緑化技術の開発・普及、そして緑豊かな都市環境の実現に向けた様々な事業の推進に尽力しました。

これまでのキャリアの中で、平野氏は様々な重要な役職を歴任しています。日本都市計画学会の会長として、学術的な発展と普及に貢献したほか、総理府の歴史的風土審議会委員として、国の歴史的な景観や文化遺産保護に関する政策提言にも携わりました。また、都市緑化技術開発機構では理事兼研究所長を務め、都市緑化に関する最先端技術の研究開発と実用化を牽引しました。

これらの多岐にわたる貢献に対し、平野氏は1984年に第8回日本公園緑地協会北村賞を受賞しています。これは、日本の公園緑地行政や技術の分野で顕著な功績を上げた人物に贈られる栄誉ある賞であり、平野氏の長年の尽力が高く評価された証と言えるでしょう。

平野侃三氏は、官僚、教育者、そして様々な団体のリーダーとして、日本の都市計画、造園、そして環境整備の分野に多大な足跡を残した、まさに多才な人物です。その功績は、現在の私たちの都市環境にも深く関わっています。

もう一度検索