平野停留場

南海平野線 平野停留場：地域の記憶を繋ぐ遊歩道

かつて大阪市平野区に存在した南海電気鉄道平野線・平野停留場は、1914年の開業以来、地域住民に親しまれてきた駅でした。特徴的な八角形の駅舎は、六角堂とも呼ばれ、昭和51年からは平野線唯一の有人駅として営業。乗客へのチケット販売だけでなく、乗務員詰所や、運転終了後の夜間当駅泊車両のための設備なども備えていました。

駅舎の構造は、行き止まり式の2線の地上ホームで、片方は切欠きホームとなっていました。1番のりばホームの先端にはトイレも設置されていました。この駅は、南海平野運輸区が併設され、乗務員の宿泊施設も備えているなど、平野線の拠点として重要な役割を担っていました。

しかし、1980年11月28日、大阪市営地下鉄谷町線の延伸開業に伴い、南海平野線は廃線となり、平野停留場も廃止となりました。廃止前には、地元住民による駅舎保存の動きもありましたが、実現には至りませんでした。

平野線の廃止後、駅舎は解体されましたが、その跡地は「プロムナード平野」として整備され、新たな憩いの場として生まれ変わりました。この遊歩道には、当時の駅舎を彷彿とさせるベンチや、実際に使用されていた車止め、ホーム上屋の骨組みを再利用した藤棚などが設置されています。煉瓦で線路を模した歩道や、モ205形電車のレリーフ、信号機なども見られ、往時の面影を感じさせる空間となっています。

さらに、ホーム跡地にはかつてモ205型車両（240号）が保存されていましたが、盗難防止のためヘッドライトを取り外され、パンタグラフを上げた状態で保管されていました。しかし、後にこの車両も解体されました。

現在でも、平野停留場周辺の商店街は「平野南海商店街」（愛称：なんかいもーる）として、かつての賑わいを偲ばせる名前を継承しています。遊歩道に設置されたモニュメントや、商店街の名前は、地域住民にとって、平野停留場という歴史の記憶を繋ぐ重要な存在となっています。

平野停留場の歴史は、単なる駅の変遷ではなく、地域社会の発展と密接に結びついていました。その痕跡は、「プロムナード平野」という形で見事に保存され、人々の記憶に刻まれ続けています。この遊歩道は、過去の栄光と、未来への希望を繋ぐ、貴重な空間と言えるでしょう。平野区を訪れた際には、ぜひこの遊歩道を散策し、かつてこの地に存在した活気ある平野停留場の面影を感じてみてください。

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