幸せになるための5秒間

『幸せになるための5秒間』：自殺寸前の4人が織りなす、予測不能な群像劇

2014年公開の英独合作映画『幸せになるための5秒間』（原題：A Long Way Down）は、ニック・ホーンビィの同名小説を原作とするコメディ映画です。自殺を決意した4人の男女が出会い、バレンタインデーまで自殺を思い留まることを約束するところから物語が始まります。

舞台はロンドン。大晦日の夜、マーティン・シャープは高層ビルの屋上から飛び降りようとしていました。彼は人気テレビ番組の司会者でしたが、15歳の少女との関係が発覚し、社会的な制裁と絶望の淵に立たされていました。

その時、同じく自殺を図ろうとしていたモーリーンが現れます。彼女は余命幾ばくもない息子を持つ母親で、息子と離れたくないという強い思いから、自死を選ぼうとしていました。

その後、2人の若者、ジェスとJ.J.も屋上に現れます。ジェスは政治家である父親との不仲に苦しみ、J.J.はバンド活動の失敗と末期ガンに打ちひしがれていました。

こうして、全く異なる背景を持つ4人が、偶然にも同じ場所で、同じ思いを抱いて出会います。彼らはそれぞれの人生における苦悩や絶望を語り合い、互いに共感し合います。そして、バレンタインデーまで自殺をしないという、奇妙な約束を交わすのです。

4人は、マーティンが「自殺しようとした4人が同じ幻覚を見て踏みとどまった」という噂を流したことで、一時的に世間の注目を集めます。マーティンが司会を務めるトーク番組に出演する機会を得ますが、番組の司会者ペニーの心無い質問攻めに遭い、彼らの精神状態はさらに悪化します。

その後、彼らはロンドンの喧騒を逃れるため、リゾート地へと旅立ちます。当初は楽しい時間を過ごしていた4人ですが、嘘が発覚したことで、彼らの関係は急速に悪化していきます。

映画では、ピアース・ブロスナンがマーティン、トニ・コレットがモーリーン、イモージェン・プーツがジェス、アーロン・ポールがJ.J.を演じています。ロザムンド・パイクが番組司会者のペニー役を演じ、その他にもサム・ニールなど、実力派俳優が脇を固めています。

2014年1月28日にはオフィシャル・トレイラーが公開され、2月10日にはベルリン国際映画祭でプレミア上映されました。しかし、批評家の評価は芳しくなく、Rotten Tomatoesでは批評家支持率23%、Metacriticでは加重平均値34/100という厳しい結果となっています。批評家からは、原作小説の魅力を十分に伝えられていない、コンセプトが不十分、俳優陣の演技が活かされていないといった意見が寄せられています。

『幸せになるための5秒間』は、日本国内では劇場公開されませんでしたが、Amazonなどで配信されています。自殺という重いテーマを扱いながらも、ブラックユーモアを交えた独特の雰囲気を持つ本作は、一見の価値のある作品と言えるでしょう。しかし、原作小説を知っている人にとっては、その期待を裏切る部分もあるかもしれません。様々な要素が詰め込まれている一方で、全体としてまとまりに欠けるという評価も理解できるでしょう。

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