幸せの時間

『幸せの時間』と『新・幸せの時間』

国友やすゆきによる漫画作品『幸せの時間』は、1997年から2001年にかけて『週刊漫画アクション』（双葉社）で連載されました。その後、続編として2005年から2014年まで『漫画アクション』で『新・幸せの時間』が連載され、2018年12月からは『週刊大衆』で再録連載されています。本項では、これらの作品について詳細に解説します。

あらすじ

幸せの時間

主人公は、マイホームを手に入れたエリートサラリーマンの浅倉達彦。愛する妻・智子と二人の子供に囲まれ、幸せの絶頂にいました。しかし、ある雨の日、智子の運転する車が起こした事故をきっかけに、家族の歯車が狂い始めます。達彦は事故の被害者である高村燿子と不倫関係に陥り、会社での横領も発覚します。長男の良介は、理想の家族を信じていましたが、高校を中退し、バンドメンバーの奈津と同棲を始めます。長女の香織も、父の同僚である矢崎修との秘密の関係に溺れていきます。そして、妻の智子もまた、再会した柳との関係に溺れていくという、それぞれの欲望が絡み合う、衝撃的な物語です。果たして、浅倉家に幸せは戻るのでしょうか。

新・幸せの時間

『幸せの時間』に登場した、達彦の長男・良介が主人公です。牧原ちづると運命的な出会いを果たし、婿養子となった良介は、ちづるの両親と同居し、穏やかな日々を過ごしていました。しかし、義妹の小夜子が留学先から帰国したことで、再びその運命の歯車が狂い始めます。家族の絆、愛憎、欲望が複雑に絡み合う人間ドラマが描かれています。

登場人物

幸せの時間

浅倉達彦: 本作の主人公。エリートサラリーマンだったが、不倫と横領によって転落していく。
浅倉智子: 達彦の妻。夫の不倫に苦しみ、自身も不倫に走る。
浅倉良介: 達彦と智子の長男。高校を中退後、奈津と同棲する。
浅倉香織: 達彦と智子の長女。父の同僚と秘密の関係を持つ。
高村燿子: 達彦の愛人。智子の交通事故の被害者。
奈津: 良介の友人。バンドメンバー。
矢崎修: 達彦の同僚。だらしない男。
矢崎江里子: 矢崎の妻。病気で亡くなる。
篠田: ガーデニング講師。智子をレイプする。
白川: 取引先のやり手営業部長。達彦と関係を持つ。
後藤: 既婚者。家出した智子と知り合い、関係を持つ。
柳: 智子の高校時代の友人。智子と関係を持つ。
望月: 宣伝部。買い物依存症でマゾヒスト。
片岡: 元建設大臣。サディスト。望月と親密になる。

新・幸せの時間

牧原良介: 主人公。ちづるの夫、婿養子。
牧原ちづる: 良介の妻。引ったくり犯を撃退した良介と出会う。
牧原小夜子: ちづるの妹。アメリカから帰国。
牧原麟太郎: ちづる・小夜子の父。牧原物産社長。
牧原貞子: ちづる・小夜子の母。
松岡圭造: ちづるの大学時代の先輩。小夜子の元家庭教師。
遠藤珠美: 良介の部下。良介を愛し、我が物にしようとする。
火浦: 経済産報社記者。珠美を本気で好きになる。

単行本

幸せの時間

双葉社 ACTION COMICSより全19巻が刊行。後に、双葉文庫名作シリーズで全12巻、ACTION COMICS新装版で全9巻が刊行されています。

新・幸せの時間

双葉社 ACTION COMICSより全21巻が刊行されています。

テレビドラマ

2012年11月5日から12月28日まで、東海テレビ制作・フジテレビ系列の昼の帯ドラマ枠で放送されました。キャッチコピーは「女は愛を奪い合う。」。田中美奈子が主演を務め、西村和彦、高樹澪などが出演しました。原作の主人公は達彦ですが、ドラマでは妻の智子に変更され、女性視点での物語が描かれています。

原作の過激な性描写も、地上波テレビドラマの放送コードに合わせてデフォルメしつつも、忠実に再現され、大きな話題となりました。しかし、過激な描写に対する視聴者からの苦情が殺到し、放送倫理・番組向上機構（BPO）の審査対象となり、再編集が行われるという事態に発展しました。BPOからは「番組制作者は国民の教養形成という公共善実現の仕事をしているとの自覚を持ってほしい」という委員長談話が発表され、東海テレビは減給処分などを受けました。

キャスト

浅倉智子: 田中美奈子
浅倉達彦: 西村和彦
浅倉良介: 上遠野太洸
浅倉香織: 伊藤梨沙子
高村燿子: 神楽坂恵
篠田俊夫: 川久保拓司
望月雅代: 巻野わかば
北島奈津: かでなれおん
三浦みどり: 高樹澪
柳浩一: 城咲仁
柳由紀: 保田圭

スタッフ

企画: 中島資太（東海テレビ）
原作: 国友やすゆき
脚本: いずみ玲
音楽: 甲斐正人
演出: 松原浩、本間美由紀、森雅弘
プロデュース: 西本淳一、猪飼健夫、大森美孝
制作協力: AX-ON
制作著作: 東海テレビ
主題歌: Ms.OOJA 「見上げてごらん夜の星を」

性描写に関する問題

放送開始直後から過激な性描写が問題視され、BPOが審議対象としました。東海テレビは、性描写について「個別のシーンではなく全体を視聴してから判断してほしい」と説明しましたが、BPOは「公共性の高い地上波の表現者は、確たる信念もなく、一定の基準を逸脱した表現を行うことは、地上波における表現の自由に自ら枷をはめ、ともすれば、視聴者を愚弄していると受けとめられる危険性がある」と指摘しました。最終的に、BPOは委員長談話を発表し、東海テレビは役員と従業員の処分を行いました。

関連書籍

ドラマのノベライズ版が双葉文庫より刊行されています。

ドラマノベライズ 幸せの時間 上巻: 亀山早苗（ノベライズ）、国友やすゆき（原作）、いずみ玲（脚本）
ドラマノベライズ 幸せの時間 下巻: 亀山早苗（ノベライズ）、国友やすゆき（原作）、いずみ玲（脚本）

外部リンク

双葉社｜幸せの時間
幸せの時間｜東海テレビ
東海テレビ 『幸せの時間』情報ページ
幸せの時間｜フジテレビ
* 幸せの時間 - テレビドラマデータベース

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