幸福なラザロ

『幸福なラザロ』（原題: Lazzaro felice）は、2018年に公開されたアリーチェ・ロルヴァケル監督によるイタリア映画です。アドリアーノ・タルディオーロ演じる純粋な青年ラザロの、現代社会との関わりを通して、善悪や人間の業を問う寓話的な物語が展開します。

物語の舞台は、外界から隔離されたイタリアの村。村人たちは侯爵夫人のタバコ農園で働き、小作人の権利を侵害されていることにすら気づいていませんでした。そんな村に、ある日、侯爵夫人の息子タンクレディが現れます。ラザロはタンクレディと親しくなり、彼の企みに巻き込まれていきます。タンクレディはラザロを利用して狂言誘拐を計画しますが、事態は思わぬ方向へ転がり、侯爵夫人の不正行為が明るみに出ることになります。

長年の搾取から解放された村人たちは故郷を去りますが、ラザロはタンクレディを捜すため、彼を追いかけます。警察のヘリコプターに気を取られたラザロは崖から転落し、気を失います。目覚めると、そこには廃墟と化した村の姿がありました。年月が大きく流れ、村は無人となっていたのです。

ラザロは初めて都会へと足を踏み入れます。そこで彼は、かつての村人アントニアと再会します。アントニアは、まるで歳を取っていないラザロの姿に驚きを隠せません。アントニアから、村がその後どうなったのか、そして彼女自身や他の村人たちがどのように生きてきたのかを聞かされるラザロ。彼らの人生は、詐欺によって生計を立てながらも、貧しさの中で苦しむものだったのです。

侯爵夫人の犯罪についても知らされたラザロですが、それでもタンクレディを探し続けます。やがて彼は、都会で暮らすタンクレディと再会を果たします。しかし、タンクレディは彼の財産を銀行に奪われていたのです。ラザロはタンクレディのために銀行に向かい、財産の返還を要求します。しかし、ラザロの行動は銀行の人々を恐怖に陥れ、彼を銀行強盗と勘違いさせたのです。銃を持っていないことに気づいた人々は、ラザロを殺害してしまいます。

この映画は、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど、高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは91%の高評価を獲得し、Metacriticでも87点という高得点を記録しています。批評家からは、友情の浮き沈み、そして深遠なテーマ性が織りなす、映画的な深みに満ちた作品であると絶賛されています。

『幸福なラザロ』は、純粋な青年の運命、現代社会の闇、そして人間の業を繊細かつ力強く描き出した、忘れられない作品です。一見単純なストーリーの中に、複雑な人間関係や社会問題が巧みに絡み合い、観る者の心に深く刻まれる感動と余韻を残します。イタリア映画特有の美しい映像美も相まって、観る者を魅了する作品となっています。

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