幻を見るひと

ドキュメンタリー映画『幻を見るひと〜京都の吉増剛造〜』

概要

『幻を見るひと〜京都の吉増剛造〜』（英題：The Reality Behind What We See）は、井上春生監督によって制作された日本のドキュメンタリー映画です。この作品は、現代日本を代表する詩人である吉増剛造氏の内面的な旅路を追ったものです。特に、東日本大震災によって心に深い傷を負い、詩を紡ぎ出すための言葉を見失いかけた氏が、古都・京都の四季折々の美しい情景の中を歩み、再び創造的な営みとしての詩作へと向かうまでの、心の回復と再生の過程が丹念に描き出されています。単なる人物伝に留まらず、震災後の精神的な軌跡と、芸術的な再生に至るまでの機微を詩的な映像表現で捉えています。

国際的な評価

本作は国内外で非常に高い評価を獲得しています。特に国際映画祭においては、世界各国の19に及ぶ著名な映画祭の長編ドキュメンタリー部門に正式に招待され、コンペティション部門で上映されました。その中でも特筆すべき成果として、アメリカ、イタリア、ベネズエラといった国々の7つの国際映画祭において、グランプリ、最優秀監督賞、部門最優秀賞など、主要な賞を含む合計10冠を達成しました。世界12大映画祭の一つに数えられるモントリオール世界映画祭への選出も、本作の質の高さを証明しています。現代詩の世界を牽引する詩人、城戸朱理氏がエグゼクティブプロデューサーを務めたことも、この作品の芸術的な側面をより一層高めています。

主な受賞歴

本作が国際映画祭で獲得した主な賞は以下の通りです。（2018年）

Royal Wolf Film Awards（アメリカ）: コンペティション部門にて最優秀監督賞およびドキュメンタリー長編部門最優秀賞を受賞。
Mindfield Film Festival - Albuquerque（アメリカ）: コンペティション部門にて最優秀監督賞およびドキュメンタリー長編部門プラチナ賞を受賞。
Oniros Film Awards（イタリア）: コンペティション部門にてオニロス金賞および伝記映画部門最優秀賞を受賞。
Five Continents International Film Festival（ベネズエラ）: コンペティション部門にてドキュメンタリー長編部門最優秀賞を受賞。
Cutting Edge International Film Festival（アメリカ）: コンペティション部門にてドキュメンタリー長編部門最優秀賞を受賞。
Pinnacle Film Awards（アメリカ）: コンペティション部門にてドキュメンタリー長編部門プラチナ賞を受賞。
SIERRA INTERNATIONAL FILM WEEKEND（ボリビア）: コンペティション部門にてドキュメンタリー長編部門最優秀賞を受賞。

これらの数多くの受賞は、本作が描く普遍的なテーマと、それを表現する映像言語が、文化や国境を越えて多くの人々に感動を与え、評価されたことを明確に示しています。

制作体制と技術

映画の制作においては、映像表現の質にこだわり、情景描写には高精細な4K撮影が、ドキュメント部分には2K撮影がそれぞれ採用されました。これにより、詩人の内面世界と彼を取り巻く京都の現実風景が、効果的に対比され、あるいは融合して描かれています。井上春生監督は監督、編集、プロデューサーを兼任し、安田浩一氏、大木スミオ氏（J.S.C.）らが撮影を担当するなど、多数の熟練したスタッフが制作に携わりました。録音は中村太郎氏、奈良田信一氏、照明は渡辺大介氏が手掛けています。

作品は、京都の代表的な寺社である醍醐寺、妙心寺、大徳寺瑞峯院、貴船神社などでの企画撮影協力や、真澄寺別院「流響院」の特別協力、さらには音楽家の大友良英氏の出演協力など、幅広い分野の関係者や機関からの多大な支援を受けて完成しました。スタンフォード大学フーヴァー研究所や国土交通省東北地方整備局など、資料協力を行った機関も多岐にわたり、この映画が多角的な視点と多くの人々の協力によって生み出されたことがうかがえます。翻訳スタッフも複数名関与しており、特に「惑星に水の木が立つ」の翻訳・翻訳監修は遠藤朋之氏が行いました。

作品情報

本作は2018年に完成し、上映時間は107分です。日本で製作され、日本語を主要な言語としています。映倫管理委員会によるコードは121439が付与されています。劇場公開は2018年 11月24日、東京都写真美術館ホールにて行われました。制作配給はHUGMACHIME、製作は「幻を見るひと」製作委員会によるものです。