幻想小曲集作品111 (シューマン)

「幻想小曲集 作品111」（Drei Fantasiestücke, Op. 111）は、ロベルト・シューマンが1851年8月に作曲したピアノ独奏曲集です。シューマンは当初この作品を「ピアノのためのツィクルス」や「ピアノのためのロマンス」と呼んでいましたが、1852年にライプツィヒのペータース社から出版される際に、現在の「幻想小曲集 作品111」というタイトルになりました。

シューマンは1837年にも「幻想小曲集 作品12」という類似のタイトルを持つ作品を作曲していますが、作品12では各楽曲に文学的なタイトルが付与されているのに対し、作品111では個々の楽曲にタイトルは付けられていません。この点が、作品111の特徴の一つと言えるでしょう。

楽曲は全3曲で構成されており、各曲は以下のような特徴を持っています。

第1曲：きわめて速く、情熱的に演奏すること (Sehr rasch, mit leidenschaftlichem Vortrag)

ハ短調、4分の4拍子で、ロンド形式を思わせるA-B-A-B-Aという構成を取っています。曲全体を通して、情熱的で激しい感情が表現されています。

第2曲：かなりゆっくりと (Ziemlich langsam)

変イ長調、4分の3拍子で、三部形式で構成されています。第一曲とは対照的に、穏やかで瞑想的な雰囲気を持っています。

第3曲：力強く、くっきりと (Kräftig und sehr markiert)

ハ短調、4分の4拍子で、三部形式で構成されています。力強く、はっきりとしたリズムが特徴的で、曲全体を締めくくる役割を担っています。

第1曲と第2曲の終わりには「アタッカ」の指示があり、全曲が切れ目なく演奏されるように構成されていることも、この作品の特徴です。演奏時間はおよそ9分から10分程度で、シューマンのピアノ音楽の特徴である、豊かな感情表現とロマンティックな雰囲気が凝縮された作品と言えるでしょう。

この作品は、シューマンの円熟期の作品として、彼の音楽観を深く理解する上で重要な作品の一つと考えられています。

参考文献

作曲家別名曲解説ライブラリー シューマン（音楽之友社）

外部リンク

幻想小曲集作品111の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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