幻日

幻日：太陽の傍らに現れる光の輪

太陽の左右に、太陽と同じ高さに光が見えることがあります。この幻想的な現象が「幻日（げんじつ）」です。英語ではsundog、mock sun、parhelionなどと呼ばれ、まるで太陽が分身したかのような光景を呈します。月を対象とした同様の現象は「幻月（げんげつ）」と呼ばれます。

幻日のメカニズム：氷晶プリズムの働き

幻日は、上空に浮かぶ六角板状の氷晶によって引き起こされます。風が穏やかな場合、これらの氷晶は空気抵抗を受け、地面に対してほぼ水平に漂います。太陽光が氷晶の一つの側面から入射し、別の側面から出ていく際に屈折します。六角形の氷晶の面は60度の角度を成しているため、氷晶はプリズムとして機能し、太陽光を曲げるのです。

この屈折によって、太陽から約22度離れた位置に光の筋が最も強く現れます。これが私たちが目にする幻日です。しかし、太陽高度が高い場合、光は氷晶内を斜めに通過するため、プリズムの頂角が60度よりも大きく作用し、幻日と太陽の角度は22度よりも広くなります。太陽高度が61度を超えると、光が氷晶内面で全反射されるため、幻日は見えなくなります。

さらに、氷晶の配列状態も幻日の見え方に影響します。氷晶が完全に水平に揃っている場合は、幻日は非常に明るく、見づらくなることもあります。一方、水平からのずれがある場合、光の強度が弱まり、観察しやすくなります。また、氷晶の屈折率は光の波長によって異なるため、幻日は虹のように色づいて見えます。太陽に近い側は赤色、遠い側は紫色を帯びることが多いです。

水平に整列した氷晶に加え、ランダムに配列した氷晶が存在する場合、幻日と内暈（ないうん）が同時に現れることもあります。太陽高度が低いと、内暈のうち太陽と同じ高度の部分が明るく見えますが、太陽高度が高くなると、幻日は内暈の外側に分離して見えます。

幻日の種類：映幻日と120度幻日

映幻日（えいげんじつ）は、高い山や飛行機から見える映日（太陽が雲などに反射して見える像）に付随して現れる幻日です。これは氷晶による通常の屈折ではなく、太陽光が氷晶の一つの側面から入射し、底面で反射した後、別の側面から出てくることで生じます。

120度幻日は、太陽光が氷晶の側面で反射してから別の側面から出てくることで、太陽から約90度または120度離れた位置に現れる非常に珍しい幻日です。

歴史の中の幻日

日本の歴史書にも幻日の記録が残っています。例えば、長禄3年（1459年）には「太陽が二つに見えたり、妖星が月を犯す異変（現象）が起きた」と記録されています。当時の人々にとって、幻日は特別な天体現象として捉えられていたのでしょう。

幻日と私たちの関わり

幻日は、大気現象への理解を深める上で重要な手がかりとなります。その出現は、上空の氷晶の状態や気象状況を反映しており、気象学的研究においても重要な役割を果たしています。また、その美しい姿は、多くの人々を魅了し続けています。私たちが普段目にしている太陽の光が、大気中の氷晶によって織りなす美しい芸術、それが幻日なのです。

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