広域マルチラテレーション

広域マルチラテレーション (WAM)

広域マルチラテレーション（WAM：Wide Area Multilateration）は、航空機やその他のトランスポンダからの信号を受信し、位置を特定する先進的な航空管制システムです。従来のマルチラテレーション技術を発展させ、空港周辺上空まで監視できることが特徴です。WAMシステムは、航空機の位置、高度情報、及び関連データを収集し、航空管制オートメーションシステムを通じて航空管制官に提供します。これにより、航空機の飛行経路や端末の自動化システムと連携し、効率的な航空交通管理を実現します。

システムの性能

WAMは、精度、検出確率、更新速度、信頼性といった分野で、二次監視レーダー（SSR）と同等の性能を持っています。ただし、地上センサーの配置により性能は航空機の位置に依存します。WAMシステムは、調査レートや出力モードの設定が可能であり、目的に応じて柔軟に対応することができます。たとえば、精密滑走路監視（PRM）やターミナル管制区（TMA）の要件に合わせた調整が可能です。また、SSRや空中衝突防止装置（TCAS）の信号を受信し処理することで、通信の頻度を低減する機能も備えています。

アビオニクスとの互換性

WAMは、様々なモード（モードA/C、モードS、モードS ESメッセージ）で運用できるため、航空機側の装備を新たに変更する必要はありません。さらに、ADS-Bを装備した航空機には、マルチラテターゲットレポートに加えてADS-Bターゲットレポートを供給します。これにより、ADS-B未装備の航空機に対しても暫定的な監視を行い、識別に役立てることができます。

オートメーションシステムへの統合

WAMは、ASTERIXというデータフォーマットを用いて、信号をオートメーションシステムと接続するための新しい地上局出力形式を採用しています。具体的には、ASTERIX CAT19（WAMシステムステータス）、CAT20（WAMレポート）、CAT21（ADS-Bレポート）を使用します。

導入の利点

WAMシステムは、視界が確保しにくい地域や山岳地帯にも設置できるという利点があります。また、導入コストが従来のSSRシステムに比べて低い場合が多いことも、採用の理由の一つです。実際、米国のコロラド州やアラスカ州、オーストリアのインスブルック、チェコなどで導入実績があります。また、WAMは高度計精度を検証するためにも使用され、2020年からは日本の成田国際空港でも導入が進められています。

具体的な設置と導入に関する考慮点

WAMを設置するには、アクセスの良い場所の選定が重要です。選定時には、地形、天候、通信環境など、さまざまな要因を考慮する必要があります。設置にあたっては、電源の確保や土地の所有権、環境への影響、他の機器との干渉なども注意しなければなりません。特別な訓練が必要になる場合があり、そのトレーニングにも適した時期を考慮する必要があります。通信環境はシステムの運用において重要な要素であり、帯域幅や信頼性を十分考慮する必要があります。

WAMは現代の航空交通管理において重要な役割を果たしており、その性能や導入の柔軟性から、さまざまな環境での導入が期待されています。

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