広岡隆

広岡 隆（ひろおか たかし）

日本の行政法学者である広岡隆（1926年6月29日 - 2009年）は、特に「行政代執行」を中心とした行政強制分野の研究で知られています。

大阪府河南町の出身。

1949年に京都帝国大学法学部を卒業しました。その後、学術研究の道に進み、1962年には「行政上の強制執行の研究」と題した論文により、京都大学から法学博士の学位を授与されています。この博士論文は、彼の研究の中心となる行政強制に関する理論的基盤を築く重要な業績となりました。

教育者としては、大阪学芸大学の助教授を皮切りにキャリアをスタートさせました。続いて関西大学法学部、関西学院大学法学部で助教授を務めた後、関西学院大学では教授として長年にわたり教壇に立ちました。1996年に同大学を定年退職し、名誉教授の称号を得ています。定年後も研究・教育への情熱は衰えず、関西外国語大学で教授を務めました。

広岡氏の研究は、行政法の中でも特に個人の権利・利益と行政権の行使が衝突する場面、すなわち行政上の強制執行や仮の救済といったテーマに深く切り込むものでした。代表的な著作である『行政代執行法』や博士論文を基にした『行政上の強制執行の研究』は、この分野における重要な研究成果として評価されています。また、行政法全般にわたる理論体系を示した『行政法総論』、特定の法分野を行政法の観点から分析した『判例・建築基準法』、『公物法の理論』など、幅広いテーマで著作を発表しています。

彼の学問的姿勢は、単に理論を構築するだけでなく、現実の行政実務や判例を深く分析し、法と社会の関わりを探求する点にも特徴がありました。そのため、『短剣と菊の花』や『行政法閑談』、『法と社会』といった著作からは、法学の枠を超えた幅広い関心や社会に対する視点が見て取れます。

共編著も多く手掛けており、『法学綱要』や『憲法要説』といった法学入門書から、『行政法の基礎知識』、『行政法判例』といった専門的な教材、さらには『法と現代生活』のような一般向けの内容まで、共同研究を通じて教育・啓蒙活動にも尽力しました。

国際関係にも関心を持ち、『国際関係論 歴史的視点から』や、欧州連合の法秩序と司法統制に焦点を当てた『欧州統合の法秩序と司法統制 欧州諸共同体司法裁判所の裁判を中心として』といった著作も発表しています。

私生活では、実弟に『アメリカ現代詩におけるホイットマン像』などの著書がある詩人・文学研究者の廣岡實がいます。

広岡隆は、行政法学、特に行政強制に関する実証的かつ理論的な研究を通じて、日本の法学界に大きな足跡を残しました。その研究成果は、今日においても行政法の理解に不可欠なものとなっています。

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