広島県道355号大崎下島循環線

広島県道355号大崎下島循環線は、広島県呉市の大崎下島をぐるりと一周する形で整備された一般県道です。

概要

この県道は、かつての豊田郡豊町と豊浜町、すなわち現在の呉市大崎下島地域を巡る全長およそ19.5kmの路線です。起点と終点は島内の同じ地点（呉市役所豊支所前付近）に設定されています。日々の交通量は比較的多く、地域にとって不可欠な生活道路としての機能を果たしています。島の一部区間、具体的には豊島大橋から平羅橋にかけては、大崎下島広域農道と重複する形で供用されています。

歴史

大崎下島は、御手洗や久比といった地域が古くから海上交通の要衝として栄え、戦前においては集落間の移動も主に船によって行われていました。陸上の道はそれぞれの集落内にとどまり、集落間を結ぶ道は山や海岸線によって隔てられ、島全体を一周する道路は存在しませんでした。

こうした状況から、第二次世界大戦中には既に島を一周する道路の計画が模索されていました。終戦後の1946年からは、当時の大長村、久友村、御手洗町といった自治体が中心となって建設が始まりました。1948年には大崎下島一周道路期成同盟が結成され、道路建設を推進。同年には久友村によって、後の県道の一部となる野坂トンネルが建設されています。

さらに道路整備の要望は高まり、1953年には大崎下島だけでなく大崎上島も含む9町村が連携した大崎上下島一周道路期成同盟へと発展しました。彼らは島内の主要な特産物である柑橘類の生産振興や、将来的な町村合併、そして観光の発展に貢献するものとして、県に対し道路開通を強く陳情しました。

その後の行政再編により、1956年に御手洗町、大長村、久比村が合併して豊町が誕生。そして1960年 10月10日、広島県告示第682号によってこの道路は正式に県道として指定されました。指定当時の路線は豊町御手洗と豊浜町大浜を結ぶ「御手洗、大浜線」と称され、総延長は約8.4kmでした。この時点での整備状況はまだ十分ではなく、改良済み区間は約3kmにとどまり、その改良区間も簡易的な舗装がされている程度でした。未改良区間は真砂土の路面で、道幅も狭く、一部にはオート三輪さえ通行できない箇所が存在したといいます。当時の島内の車両台数はわずか50台程度でした。

しかし、その後も道路整備は着実に進められました。これにより、島内の交通事情は大きく変化し、農作物の運搬手段はそれまでの農船から軽貨物車へと主流が移り、フェリーを利用した島外への移動も増加しました。こうした変化に伴い、1975年には出作農民組合が結成されるなど、島民の交通に関する活動も見られるようになりました。1977年には、当時運航していたフェリー会社の運賃値上げに反対する署名運動が行われ、多くの島民が参加しました。

さらに、島の周辺を結ぶ橋の開通により、この県道の重要性は増しました。1992年 11月30日には豊浜大橋が開通し、豊島とのアクセスが向上。1998年 11月6日には中の瀬戸大橋が完成し、岡村島とも陸路で結ばれました。そして、2005年 3月20日には豊町と豊浜町が呉市と合併したことにより、全線が呉市内を通過する路線となりました。

路線状況

路線の延長は約19.491km、路線面積は約152,635平方メートルです。

一部区間には通行規制が設けられています。2017年度の時点では、呉市豊浜町大浜から呉市豊町宇留明にかけてのおよそ8.1kmが、落石などの影響により通行規制区間に指定されています。規制時の迂回路としては、大崎下島循環線の残りの区間が利用されます。

道路施設

主な道路施設として、大長大橋、豊大橋といった橋梁や、1954年に竣工した延長65mの野坂トンネルなどがあります。

地理

この県道は、島外への接続において、愛媛方面および広島方面へ向かう道路は農道橋であり、他の県道とは直接接続しないという特徴を持っています。通過する自治体は、全線が広島県呉市内です。

沿線

大長大橋を起点として時計回りに沿線を見ていくと、呉市役所豊支所が置かれた豊市民センターや、みかんメッセージ館など、島の特徴を示す施設があります。歴史的な町並みが保存されている御手洗地区や、沖友天満宮なども沿線に位置します。また、御手洗港、大浜港、立花港、久比港、小長港など、島内外を結ぶ各港が点在し、それぞれ大崎上島、竹原、斎島、三角島といった方面への定期船が運航されています。さらに、日本一のジャングルジムがある架橋記念公園や、呉市立豊小学校、呉市消防局の出張所なども沿線にあり、島民の生活や交流の拠点となっています。終点付近にはゆたか海の駅があり、再び大崎上島や竹原方面への船が利用できます。

広島県道355号大崎下島循環線は、島の歴史的な交通状況を克服し、陸上交通網を確立したことで、今日の島民生活や産業、そして豊かな自然と歴史文化を訪れる観光客にとって、欠かせない基盤となっています。

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