広島高等工業学校

広島高等工業学校の歴史と変遷

広島高等工業学校（略称：広島高工）は、1920年に広島市で設立された官立の旧制専門学校です。設立の背景には、第一次世界大戦中の経済成長があり、地域の産業振興を目的とした工学教育の必要性が高まっていました。このような動きに応じて、広島県及び地元財界の強力な支援のもと、学校開放主義の方針が採られ、地域の工業界と密接に連携しながら教育活動が行われました。

創立と初期の発展

1920年1月17日、広島高等工業学校は文部科学省直轄の専門学校として設立され、当初は機械工学科、電気工学科、応用化学科の3学科が設けられました。初代校長には川口虎雄が就任し、学生たちに実践的な技術を習得させることに注力しました。1929年には地元産業の要求に応え、醸造学科が新設されるなど、教育内容は時代のニーズに応じて拡充されていきました。

第二次世界大戦と学校名の変更

1944年、広島高等工業学校は「広島工業専門学校」に改称されました。この改称は、当時の戦時体制の影響を受けたもので、軍需産業に対応するための教育や研究が強調されるようになりました。設立以来、地域産業との連携を重視してきた学校は、戦争の影響で多くの学生が勤労動員される苦境に立たされました。1945年の原爆投下により校舎は大きな被害を受け、多くの生徒や教職員が犠牲となりました。特に、爆心地から2.1kmという近距離での被爆は、その後の復興にも大きな影響を与えました。

広島大学工学部への発展

戦後の復興が進む中、1949年には広島文理科大学を中心に広島大学が設立され、広島工業専門学校もこの新たな大学の一部として取り込まれました。これにより、広島工業専門学校は「広島大学広島工業専門学校」と改称され、同年、広島大学工学部の構成母体となりました。1951年3月には工業教員養成所を含む番号の卒業式が行われ、広島工業専門学校としての歴史に幕を下ろしましたが、一端は新制大学の一部として教育が継続されました。

校地と施設の変遷

設立当初の広島高等工業学校は、千田町の地域に校舎を持ち、長らくその地を拠点に活動してきました。しかし、原爆による被害を受けて校舎が使用不能となり、1945年からしばらくの間、呉市の仮校舎で授業が行われました。1947年には旧校舎に復帰し、以後1950年代まで地域の教育機関としての役割を果たしていきました。

その後は広島大学工学部に移転し、1982年には東広島に統合されることになります。千田町の旧校地はその後公園として整備され、当時の校舎や施設はほとんど失われていますが、移転先には被爆建物としてのシンボルが残されています。

卒業生の活躍

広島高等工業学校からは多くの著名な卒業生が輩出されています。ニッカウヰスキーの相談役を務めた竹鶴威や、東レの元社長の広田精一郎など、さまざまな分野で活躍する人材が育成されてきました。これらの卒業生は、母校の伝統を受け継ぎながら地域社会や産業界での重要な役割を果たしており、学校の歴史に深く関わっています。

このように、広島高等工業学校は設立以来、地域の産業を支える人材を育成し、広島大学工学部へとつながる重要な存在であり続けています。

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