広田村 (愛媛県)

愛媛県伊予郡広田村：自然と歴史が織りなす記憶

広田村は、愛媛県の中予地方、かつての下浮穴郡に位置した村でした。2005年1月1日に北に隣接する砥部町と合併し、新たな砥部町の一部となり、その自治体としての歴史に幕を下ろしました。ここでは、広田村の地理、地名の由来、歴史、産業、教育、交通について詳しく見ていきましょう。

地理

広田村は、松山市から南へ約30km、国道33号と国道379号線沿いの山間部に位置していました。玉谷川の両岸にわずかな平地が開けており、中心街である総津には村役場（合併後は支所）、中学校がありました。東西、南北ともに約7kmという小さな村でした。

地名の由来

広田という地名の由来は、開拓された田畑をイノシシが荒らす「ぬばた」と呼ばれる土地にありました。この地域は「広奴田（ひろぬた）」郷と呼ばれ、それが省略されて「広田」になったとされています。

歴史

広田村の歴史は、明治時代の町村制施行に始まります。

1889年（明治22年）12月15日：下浮穴郡多居谷村、猿谷村、総津村、中野川村、高市村、玉谷村、満穂村、栗田村が合併し、下浮穴郡広田村が成立。
1897年（明治30年）4月：伊予郡に郡域が変更。
1929年（昭和4年）3月：旧栗田村区域が中山町（現伊予市）に編入。
1963年（昭和38年）1月：記録的な豪雪に見舞われ、山林に甚大な被害。
1964年（昭和39年）12月：広田鉱山が再開鉱。
1970年（昭和45年）9月：広田鉱山が閉山。
1973年（昭和48年）1月：有線放送が開始。
1974年（昭和49年）3月：広田バイパスが完成。
1975年（昭和50年）3月：主要地方道砥部・内子線が国道379号に昇格。
1976年（昭和51年）10月：国道上尾隧道第二第三隧道が開通。
1986年（昭和61年）3月：広田焼開発センターが完成し、広田焼が始まる。
1994年（平成6年）4月：道の駅「ひろた」が認定。
2000年（平成12年）4月：峡の館がオープン。
2005年（平成17年）1月1日：砥部町と対等合併し、新たな砥部町となる。

行政

村役場は何度か移転を繰り返し、合併後は砥部町の広田支所となりました。歴代村長の中には、地域の発展に尽力した人物が多く存在します。

経済・産業

広田村は山村であり、主要な産業は農林業でした。近年では松山方面への交通アクセスが改善されましたが、かつては交通の便が悪く、工場誘致は進んでいませんでした。林業はかつて隆盛を誇りましたが、木材価格の低迷により衰退しました。

教育

村内には高等学校はありませんでした。小学校は玉谷小学校、高市小学校、広田小学校がありましたが、合併後の2017年に統合され、広田小学校のみとなりました。高市小学校は山村留学の取り組みで知られていました。中学校は広田中学校がありましたが、2009年に閉校し、砥部中学校に統合されました。

交通

広田村には鉄道が通っておらず、交通は道路に依存していました。国道379号が村内を南北に縦貫しており、松山市・砥部町方面や内子町方面へのアクセスを支えていました。道の駅「ひろた」は、地域住民や観光客の休憩地点として親しまれていました。

広田村は、その豊かな自然と歴史を背景に、独自の文化を育んできました。砥部町との合併により、その名は地図から消えましたが、地域の記憶として、その風景は今も人々の心に残っています。

もう一度検索