庄下川
庄下川は、兵庫県尼崎市の市域を南北に縦断する一級河川です。淀川水系に属し、かつては二級河川でしたが、1972年に庄下川水系全体が淀川水系に編入されたことで、一級河川へと位置づけが変わりました。
この川の源流は、上流部にあたる東富松川の伊丹市との市境付近に始まります。流れは尼崎市内に入り、南塚口町八丁目で北側から流れてくる二つの支流（富松川、東富松川などを含む）が合流します。かつてはこの合流地点より下流が庄下川と呼ばれていました。ここから川は南へと向きを変え、市街地を進んでいきます。大西町と名神町の境界付近では、主要幹線道路である山幹通りや五合橋線と連続して交差し、新庄下橋や錦橋などが架かっています。尾浜町では、東側から流れ来る昆陽川と合流し、さらに南下を続けます。
JR神戸線（東海道本線）の下をくぐり抜けると、川は尼崎市南部の工業地帯へと入っていきます。西長洲町では玉江橋線（長洲橋）をくぐり、この道路の東側を流れるようになります。左岸には尼崎市の文化拠点である尼崎総合文化センターが位置し、その先で国道2号（玉江橋）の下を通過します。さらに南へ進むと、阪神尼崎駅のすぐ東側で、阪神本線および阪神なんば線の複数の線路をくぐります。国道43号線や阪神高速道路3号神戸線といった大動脈とも交差した後、川の流れは大きく東西へと分かれます。
西へ向かう流れは、かつて左門殿川の一部であったとされ、現在は工業地域の運河として利用されています。この流れは尼崎閘門を経て、東浜排水機場に設けられたポンプによって尼崎港、すなわち大阪湾へと注ぎ出ます。一方、東へ分かれた流れは、松島排水機場および庄下川水門を経て、大阪市との境界を流れる神崎川の分流、左門殿川に合流します。松島排水機場は、大阪湾岸地域の高潮対策として進められた事業の一環として1971年に完成した施設です。
庄下川は、その歴史において環境問題に直面した時期がありました。特に大正時代から昭和初期にかけては、尼崎閘門の完成などが影響し川の流れが滞りがちになり、流域の工場からの排水なども加わって水質が著しく悪化しました。しかし、昭和末期から平成にかけて実施された河川整備工事によって水質は大きく改善され、一時は姿を消していた鯉が再び棲めるようになるまで回復しました。この取り組みとその成果は高く評価され、2000年には当時の建設省によって「甦る水100選」の一つに選ばれています。
庄下川とその水系は非常に広範囲に及び、複雑なネットワークを形成しています。主要な支流の一つである昆陽川は、尾浜町の尼崎インターチェンジ南側で庄下川に合流します。昆陽川を遡ると、上流部では上坂部川、伊丹川、そして昆陽川捷水路といった支流に分岐しています。特筆すべきは昆陽川捷水路で、これは猪名川の分流である藻川から取水しており、途中で伊丹川とも交差しています。
さらに庄下川の源流部近く、南塚口町八丁目の合流地点より北側では、川は東側から富松川、北側から東富松川、そして西側から西富松排水路（西富松川とも呼ばれる）の三つに分かれています。このうち富松川と東富松川は一級河川に指定されていますが、西富松排水路は普通河川として扱われています。東富松川は尼崎市と伊丹市の境界までの区間を含めて庄下川の一部とされることもあります。
東富松川を上流へ進むと、途中で富松川と交わる興味深い地形が見られます。南塚口町の三川合流地点から東へ分かれていた富松川が、ここで東富松川の西側へと位置を変えるのです。東富松川はさらに上流でいくつかの小河川に分かれ、その中には伊丹市にある昆陽池に源を発する流れも含まれています。
一方、普通河川である西富松排水路は、尼崎市立尼崎高等学校の敷地内を通り抜け、武庫之荘五丁目で主要道路である尼宝線と交差します。西武庫団地の東側付近からは水路が複数の流れに分岐し、最終的には尼崎市の最北端、宮ノ北団地の西側に位置する「六樋」に達します。この六樋は、武庫川から農業用水を取り入れるために設けられた施設です。元々この地域には野間井、生島井、武庫井、水堂井、守部井、大島井という六つの取水口がありましたが、1924年に行われた武庫川の改修工事の際に、これらを統合して一つの施設としたものです。このため、庄下川水系には武庫川や、さらに上流の篠山川から供給される水も含まれることになります。この「武庫川六樋水系」におけるホタル生息地の保全を目指した取り組みは、「ホタルの里づくり」として昭和61年度の建設省手づくり郷土賞（ふれあいの水辺部門）を受賞しています。
地域文化との関わりとしては、庄下川の市中心部付近で「船だんじり」と呼ばれる祭りがかつて行われていました。これは明治時代から昭和初期にかけて盛んだったもので、一度は途絶えましたが、平成に入ってから地域の人々の手によって復活を遂げ、現在に至ります。
庄下川はまた、歴史的な災害の記録にもその名が残っています。1934年（昭和9年）9月21日に近畿地方を襲った室戸台風による猛烈な暴風雨の際、庄下川の堤防が決壊し、尼崎市内一帯が広範囲にわたって冠水するという大きな被害をもたらしました。
このように、庄下川は単なる河川であるだけでなく、尼崎市の治水・利水、歴史、文化、そして複雑な水系ネットワークの中心をなす、多面的な顔を持つ重要な存在と言えます。
この川の源流は、上流部にあたる東富松川の伊丹市との市境付近に始まります。流れは尼崎市内に入り、南塚口町八丁目で北側から流れてくる二つの支流（富松川、東富松川などを含む）が合流します。かつてはこの合流地点より下流が庄下川と呼ばれていました。ここから川は南へと向きを変え、市街地を進んでいきます。大西町と名神町の境界付近では、主要幹線道路である山幹通りや五合橋線と連続して交差し、新庄下橋や錦橋などが架かっています。尾浜町では、東側から流れ来る昆陽川と合流し、さらに南下を続けます。
JR神戸線（東海道本線）の下をくぐり抜けると、川は尼崎市南部の工業地帯へと入っていきます。西長洲町では玉江橋線（長洲橋）をくぐり、この道路の東側を流れるようになります。左岸には尼崎市の文化拠点である尼崎総合文化センターが位置し、その先で国道2号（玉江橋）の下を通過します。さらに南へ進むと、阪神尼崎駅のすぐ東側で、阪神本線および阪神なんば線の複数の線路をくぐります。国道43号線や阪神高速道路3号神戸線といった大動脈とも交差した後、川の流れは大きく東西へと分かれます。
西へ向かう流れは、かつて左門殿川の一部であったとされ、現在は工業地域の運河として利用されています。この流れは尼崎閘門を経て、東浜排水機場に設けられたポンプによって尼崎港、すなわち大阪湾へと注ぎ出ます。一方、東へ分かれた流れは、松島排水機場および庄下川水門を経て、大阪市との境界を流れる神崎川の分流、左門殿川に合流します。松島排水機場は、大阪湾岸地域の高潮対策として進められた事業の一環として1971年に完成した施設です。
庄下川は、その歴史において環境問題に直面した時期がありました。特に大正時代から昭和初期にかけては、尼崎閘門の完成などが影響し川の流れが滞りがちになり、流域の工場からの排水なども加わって水質が著しく悪化しました。しかし、昭和末期から平成にかけて実施された河川整備工事によって水質は大きく改善され、一時は姿を消していた鯉が再び棲めるようになるまで回復しました。この取り組みとその成果は高く評価され、2000年には当時の建設省によって「甦る水100選」の一つに選ばれています。
庄下川とその水系は非常に広範囲に及び、複雑なネットワークを形成しています。主要な支流の一つである昆陽川は、尾浜町の尼崎インターチェンジ南側で庄下川に合流します。昆陽川を遡ると、上流部では上坂部川、伊丹川、そして昆陽川捷水路といった支流に分岐しています。特筆すべきは昆陽川捷水路で、これは猪名川の分流である藻川から取水しており、途中で伊丹川とも交差しています。
さらに庄下川の源流部近く、南塚口町八丁目の合流地点より北側では、川は東側から富松川、北側から東富松川、そして西側から西富松排水路（西富松川とも呼ばれる）の三つに分かれています。このうち富松川と東富松川は一級河川に指定されていますが、西富松排水路は普通河川として扱われています。東富松川は尼崎市と伊丹市の境界までの区間を含めて庄下川の一部とされることもあります。
東富松川を上流へ進むと、途中で富松川と交わる興味深い地形が見られます。南塚口町の三川合流地点から東へ分かれていた富松川が、ここで東富松川の西側へと位置を変えるのです。東富松川はさらに上流でいくつかの小河川に分かれ、その中には伊丹市にある昆陽池に源を発する流れも含まれています。
一方、普通河川である西富松排水路は、尼崎市立尼崎高等学校の敷地内を通り抜け、武庫之荘五丁目で主要道路である尼宝線と交差します。西武庫団地の東側付近からは水路が複数の流れに分岐し、最終的には尼崎市の最北端、宮ノ北団地の西側に位置する「六樋」に達します。この六樋は、武庫川から農業用水を取り入れるために設けられた施設です。元々この地域には野間井、生島井、武庫井、水堂井、守部井、大島井という六つの取水口がありましたが、1924年に行われた武庫川の改修工事の際に、これらを統合して一つの施設としたものです。このため、庄下川水系には武庫川や、さらに上流の篠山川から供給される水も含まれることになります。この「武庫川六樋水系」におけるホタル生息地の保全を目指した取り組みは、「ホタルの里づくり」として昭和61年度の建設省手づくり郷土賞（ふれあいの水辺部門）を受賞しています。
地域文化との関わりとしては、庄下川の市中心部付近で「船だんじり」と呼ばれる祭りがかつて行われていました。これは明治時代から昭和初期にかけて盛んだったもので、一度は途絶えましたが、平成に入ってから地域の人々の手によって復活を遂げ、現在に至ります。
庄下川はまた、歴史的な災害の記録にもその名が残っています。1934年（昭和9年）9月21日に近畿地方を襲った室戸台風による猛烈な暴風雨の際、庄下川の堤防が決壊し、尼崎市内一帯が広範囲にわたって冠水するという大きな被害をもたらしました。
このように、庄下川は単なる河川であるだけでなく、尼崎市の治水・利水、歴史、文化、そして複雑な水系ネットワークの中心をなす、多面的な顔を持つ重要な存在と言えます。
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