底引網

底引網について

底引網（英語：Bottom trawling net）は主に引き網漁業に使用される漁網です。底引き網や底曳網とも呼ばれるこの技術は、効率的な漁業手法として広く利用されていますが、その使用にはさまざまな環境的な問題が伴います。

概要

底引網を用いる漁業には、具体的にトロール漁業などがありますが、この方法の特性上、ターゲット以外の魚や海洋生物も一緒に捕獲されてしまうことが多くあります。このことは生態系に深刻な影響を与え、特に海底の生物環境を破壊する原因となっています。

また、底引網の重さによって、網が海底に沈む際には周囲の土砂を舞い上げることがあり、これにより海底に生息する生物の生息環境が損なわれてしまいます。例えば、ニュージーランド近海のタスマン海で行われた調査結果によると、通常の海山に対し、底引トロール漁が頻繁に行われた地域では岩の露出率が約95%に達しました。さらに、スペイン沖の調査では、底引網が行われている地区の堆積物における有機物の含有量が、影響を受けていない海底に比べて52%も低下していることが明らかになっており、これにより環形動物の数や多様性が大幅に減少しています。これらの影響は生態系の健全性を損ない、最終的には気候変動にも影響を与えると科学者たちは警鐘を鳴らしています。底引漁業は1996年から2020年までに、推計で85億トンから92億トンもの二酸化炭素を大気中に放出します。このような背景から、アメリカやニュージーランドを始めとする多くの国では底引網漁業が規制されています。

歴史

底引網の使用に関する懸念は古くから存在し、14世紀のイギリスでは、エドワード3世の治世の時代にすでに環境への悪影響を理由に禁止の嘆願が行われていました。その後も禁漁の動きは進展し、1949年には日本でも漁区の拡大にあたり、連合国軍最高司令官総司令部と協議を行い、過度な漁獲を防ぐために底引き船の数を大幅に減少させることが求められました。この結果、日本には漁業法のもとで底引網漁業に対する制限が設けられることとなりました。さらに、大臣の許可が必要な漁業方式も導入され、許可なく行われる漁業は密猟として扱われます。

2006年には、パラオのトミー・レメンゲサウ大統領が国連での禁止を呼び掛け、ツバルやマーシャル諸島国からの支持を受けましたが、実際にはその提案は阻止されました。

まとめ

このように、底引網漁業は効率性の一方で深刻な環境問題を引き起こす手法であるため、持続可能な漁業を実現するためにはその方法や影響についての深い理解と適切な規制が必要です。環境保護と漁業の持続可能性を両立させるためには、技術の革新や慣行の見直しが求められています。

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