府中家具

府中家具



府中家具は、広島県府中市で製造されている伝統的な家具です。地域団体商標として認定されており、府中家具工業協同組合によってそのブランドが管理されています。

特徴



府中家具は、特に高級な婚礼家具ブランドとして知られています。かつては着物や大切な品を収納できる婚礼家具が主流でしたが、現在ではライフスタイルの変化に合わせて、様々な家具やインテリア製品が生産されています。品質とデザイン、そして量産体制の両立にこだわり、産地問屋を介さない直接販売という独自の販売網を築き上げた点が、他の産地との違いとして挙げられます。

府中家具工業協同組合は、共同展示場の運営や市場開拓、広報活動、商標管理などを行っています。組合は「素材を吟味」「確かな技術」「洗練された仕上げ」の3つを府中家具の特徴としています。

製造業者



府中家具工業協同組合には多くの業者が加盟しており、家具メーカーだけでなく、部品加工業や資材業など、約150社が関連企業として府中家具の製造に関わっています。

歴史



府中は古代に備後国府が置かれた場所であり、古くから交通の要衝として栄えてきました。江戸時代には福山藩の城下町として、また石見銀山からの街道が整備されたことで、物資の集散地として発展しました。このような背景から、府中では繊維産業や醸造業、そして指物(木工業)が発達し、近代以降は織物・機械・金属加工業、そして家具製造が盛んになりました。

府中家具の起源は、宝永年間(1704年-1710年)に大阪でタンス作りを学んだ職人が、その技術を地元に持ち帰ったことに始まります。当時はタンスの製造に関する記録は少ないものの、中国山地から切り出された木材の集積地であったことや、木工神社が建立されたことなどから、指物生産が盛んであったと考えられています。

明治時代に入ると、農閑期にタンス作りを行う農家が増えましたが、販路は近隣地域に限られていました。しかし、1914年(大正3年)に鉄道が開通したことで、販路が拡大し、原材料の流入も促進され、タンス製造は一気に盛んになりました。大正時代には、九州や朝鮮・満州にも輸出されるようになり、府中家具の名は広まっていきました。

昭和初期には、職人たちが小組合を結成し、小売店への直接販売ルートを構築したり、木工機械を導入するなど、近代化・合理化に努めました。太平洋戦争中は一時生産が中断されましたが、戦後、進駐軍向けの家具製造を経て、1950年(昭和25年)に府中家具工業協同組合が発足し、共同での事業が再開されました。

戦後の道路網整備とトラックの普及は、原材料の入手と家具の販路拡大に貢献しました。1954年(昭和29年)には、共同見本市である家具祭りが開催され、技術コンクールも同時に行われるようになり、品質向上と新商品開発につながりました。

婚礼家具の隆盛



家具祭りへの出品作品として開発された婚礼家具セットは、他産地に先駆けて開発され人気商品となりました。和ダンス・洋服ダンス・整理ダンスの3点セットは、統一されたデザインで新婚生活に必要な家具を揃えることができ、多くの支持を集めました。1956年(昭和31年)の広島県物産見本市への出品以降、婚礼家具セットは人気商品となり、他のメーカーも追随して下駄箱や鏡台を加えたセットを開発しました。

1970年代には、団塊世代の結婚適齢期、高度経済成長モータリゼーションなどの要因が重なり、府中家具の婚礼家具は爆発的に売れました。高級な婚礼家具セットは品薄となるほどで、メーカーは高品質保持に努め、注文を断ることもあったといいます。この時期に、府中家具は高級婚礼家具の産地としてその名を確立しました。

総合化とブランド展開



婚礼家具ブームが過ぎると、府中家具は総合インテリア家具製造へと方向転換を図りました。1985年(昭和60年)には、府中市が計画した家具付き市営住宅から研究が始まり、1992年(平成4年)には「府中インターハウジング」が独立し、研究開発を引き継ぎました。

2007年(平成19年)には、府中家具は地域団体商標として登録され、ブランドロゴマークも新たに作成されました。これは、模倣品や粗悪品の流通を防ぎ、府中家具ブランドを高めることで他の地域との差別化を図ることを目的としています。

近年では、デザイナーと組んで新商品開発を行ったり、海外市場への進出も積極的に行っています。2010年(平成22年)には、中小企業庁のJAPANブランド育成支援事業に採択され、ヨーロッパ市場への進出に向けた取り組みを進めています。

関連情報



府中家具工業協同組合が運営する府中家具協同会館では、府中家具の展示販売が行われています。
府中市では、タンスの引き出し部分が太鼓になっている「たんす太鼓」や、タンスを担いでタイムを競う「たんすリレー」など、府中家具にちなんだイベントも開催されています。

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