府中捕物控

府中捕物控（ふちゅうとりものひかえ）

「府中捕物控」は、1975年に予定されていたシングルで、三億円事件をテーマにした楽曲です。この曲は、作詞・作曲を担当した山本正之により作られました。当時、事件の影響を受けた様々な表現がなされる中、この楽曲がパロディとして注目を集めていました。しかし、発売日の前日、レコード会社から「社の良識に合わない」という理由で突如として発売中止が決定しました。これにより、アルフィーのシングルの中で唯一、正式な発売が叶わなかったケースとなりました。

当初、この曲はアルフィーのメンバー3人による初のシングルとして位置付けられていましたが、発売中止が影響し、彼らは1979年まで新たなレコード会社との契約を持たず、バックバンドとしての活動を続けることとなります。この期間中、彼らは様々なアーティストのサポートをしながら、小規模なライブ活動を続けました。

この楽曲に関する音源はなかなか公開されることがありませんでしたが、2014年12月のデビュー40周年を記念して発売された『青春の記憶 [+2]』にボーナストラックとして含まれ、39年ぶりに日の目を見ることとなります。この時のジャケットの写真には、サングラスがCGで加えられた桜井賢の姿が映っています。

「府中捕物控」はその後、数回のライブパフォーマンスで歌われることがあり、その映像は様々なライブビデオにも収録されています。特に、1992年から1997年までの記録を収めた『THE ALFEE|THE_ALFEE HISTORY III』や、1987年に行われた「SUNSET-SUNRISE」コンサートでの一部の映像には、曲の一部が収録されています。曲調は親しみやすく、山本正之が後に作曲した『ヤッターマン』の主題歌とも似通っており、間奏には坂崎の物真似が収録されているのも特徴的です。

シングルの歌詞には、発売中止となったオリジナル版と山本自身によるセルフカバー版に若干の違いが存在し、さらにライブ版においても別の歌詞が用意されています。また、2016年にカラオケのJOYSOUNDに登録された際の歌詞もシングル版に基づいています。

アルフィーのメンバーは後に、自分たちがオリジナル曲の制作に取り組むようになった理由を、この楽曲が発売中止になった影響として振り返ります。彼らは、この経験から「ヒットしていた場合、今の自分たちは存在しなかったかもしれない」と考えるようになったと言います。彼らの音楽キャリアにおける重要な転機となった出来事でした。

山本正之版

山本正之自身は、1994年にこの楽曲をセルフカバーとしてシングル文庫シリーズの第二弾『府中捕物控』に収録し、さらに2010年にはアルバム『男に咲く花』に新たな歌詞を加えた「府中捕物控後談」を発表しています。このように、曲は時を経て様々な形で受け継がれ続けています。

明日からよその人

アルフィー版の「府中捕物控」のB面に収録が予定されていた「明日からよその人」は、山本が姉の結婚をテーマにした楽曲です。特に問題のある内容ではありませんでしたが、シングルが発売中止となった影響で長らく未発売の状態が続いていました。しかし、こちらも1995年に山本のシングル文庫シリーズでセルフカバーとして収録されることで、少しずつ光が当たることになりました。

「府中捕物控」は、音楽キャリアにおける葛藤や新たな曲作りのインスピレーションを与えた重要な作品として、今もなお多くのファンの記憶に残っています。

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