庭訓往来

庭訓往来について

庭訓往来（ていきんおうらい）は、南北朝時代末期から室町時代前期にかけて成立した初歩的な教科書で、寺子屋で習字や読本として広く利用されていました。この作品は、著者が南北朝時代の僧侶である玄恵であるとされていますが、詳細は不明です。

概要

庭訓往来は、擬漢文体で構成されており、日常生活に必要な知識を包括的に扱っています。内容は衣食住、職業、領国の経営、建築、司法など多岐にわたり、一般常識を学ぶ上での貴重な資料として位置付けられています。この教科書は、合計25通の手紙から成り立っており、1年間の12ヶ月に対して往来の文書をそれぞれ12通、さらに8月の特別な手紙も1通含まれています。

庭訓というタイトルは、『論語』の中の故事に由来しており、親から子へ教えを伝える意味で用いられます。各月ごとのテーマに沿った手紙には、様々な単語や文例が盛り込まれており、読みやすい形式で日常会話や書簡の書き方を学べる工夫が凝らされています。

また、庭訓往来は、多くの写本や注釈本、絵入りの版本が出版され、特に江戸時代になっても寺子屋での教科書として広く使われ続けました。古い写本は30種類、板本に至っては200種類以上存在しています。

内容の形式

庭訓往来は手紙文の形式を取り入れており、書き出しや締めくくり、日付、差出人名、宛名の書き方など、実際の文書作成に役立つ情報が豊富に含まれています。内容は月ごとにテーマが設定されており、例えば、1月では新年の会遊、2月は花見詩歌の宴、3月は大名の領国統治に関する事柄などが扱われています。

• - 1月：新年の会遊
• - 2月：花見詩歌の宴
• - 3月：地方大名の領国統治、勧農、館の造り、果樹
• - 4月：領地の繁栄、商取引の業種
• - 5月：家財家具、調理品
• - 6月：盗賊討伐
• - 7月：競技会の衣装
• - 8月：司法制度
• - 9月：大法会における伽藍や仏像
• - 10月：大斎の行事関連
• - 11月：病気の治療法
• - 12月：地方行政の制度

このように、各月のテーマに沿った内容は、単なる教科書にとどまらず、読みながら多くの実用知識を自然に習得できる作りになっています。

刊本の種類

庭訓往来は、主に四つの分類に分けられます。まず「手本系」は、習字を目的としたもので、見やすく大きな字で書かれたものです。「読本系」では、文字の読み方や理解を助けるための振り仮名が付けられています。「注釈本系」では、文意の解説が施されており、「絵抄系」では插絵を用いて内容を視覚的に理解しやすくしています。

庭訓往来は、単なる教科書の枠を超え、当時の社会や生活様式を知るための貴重な資料であり、今後も多くの人に受け継がれていくでしょう。

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