庶務行員 多加賀主水が許さない

庶務行員 多加賀主水シリーズ

江上剛氏の小説『庶務行員 多加賀主水が許さない』を皮切りに展開される本シリーズは、祥伝社文庫より刊行されている人気作品群です。2016年7月に第一作が登場して以来、次々と続編が発表され、銀行という舞台で庶務行員が活躍する異色のミステリーとして多くの読者の支持を集めています。

小説シリーズの展開

小説シリーズは、『小説NON』での連載を経て単行本化、文庫化されています。主な本編として、『庶務行員 多加賀主水が許さない』、『庶務行員 多加賀主水が悪を断つ』、『庶務行員 多加賀主水が泣いている』、『庶務行員 多加賀主水がぶっ飛ばす』、『庶務行員 多加賀主水の憤怒の鉄拳』、『庶務行員 多加賀主水の凍てつく夜』などが刊行されています。本編の装画は岡田航也が手がけています。また、主人公の相棒である生野香織を主人公にしたスピンオフ作品『銀行員 生野香織が許さない』も発表されており、こちらのイラストはかわいちひろが担当しています。

テレビドラマ化

小説シリーズの人気を受けて、2017年からはテレビ朝日系列でテレビドラマシリーズが放送されています。主演は実力派俳優の高橋克典が務め、多加賀主水を魅力的に演じています。ドラマのタイトルは放送回によって異なり、『庶務行員 多加賀主水が許さない』、『庶務行員 多加賀主水が悪を断つ』、そして第三作以降は『庶務行員 多加賀主水』または『庶務行員・多加賀主水』という形になっています。

ドラマの主な舞台は、合併によって誕生した第七明和銀行の高田通り支店です。旧行出身者間の派閥争いや、それに伴う人間関係の複雑さなども描かれ、社員食堂のメニューが派閥によって分かれているといった設定が、組織内の雰囲気をユニークに表現しています。

主要キャラクター（テレビドラマ）

ドラマの中心人物は、高橋克典演じる主人公、多加賀主水です。彼は第七明和銀行高田通り支店の庶務行員ですが、その経歴はユニークで多岐にわたります。元フリーターや様々な職業を経験した後、銀行の総務部長、神無月隆三からの特命を受けて第七明和銀行で働くことになります。普段は清掃やティッシュ配りといった地味な業務に真摯に取り組みますが、持ち前の正義感から組織の不正や顧客を狙う悪事を見過ごすことができません。これまでの経験で培われた優れた洞察力や、剣道の達人としての身体能力、さらには料理の腕前などを駆使して、銀行内外で発生する様々な事件やトラブルの解決に当たります。その非凡な能力は上層部も認めるところであり、難解な問題の処理を依頼されることも少なくありません。

主水の頼れるパートナーとして、夏菜が演じる事務課の生野香織がいます。彼女は主水と共に事件解決に協力し、その行動をサポートします。

高田通り支店には、風見しんご演じる、主水に理解を示す大らかな性格の事務課長、難波俊樹がいます。また、水沢エレナ演じる椿原美由紀や、安座間美優演じる中島鮎子といった窓口担当の行員、仲村美海演じる営業課の大久保杏子が働いています。第3作からは、高島礼子演じる山内貴恵が、支店長として着任。赤字店舗を立て直してきた実績を持つ彼女は、支店を様々な面で支えます。

本店からは、神保悟志演じる神無月隆三総務部長が登場。主水を銀行へ招き入れた人物です。本店へ異動する者もおり、元高田通り支店長の新田宏治（演：葛山信吾）は頭取秘書となります。一方、コトブキツカサ演じる大門一茂は、度重なる問題行動により降格を繰り返すという、シリーズを通してコミカルに描かれるキャラクターです。

周辺人物と舞台

物語には、銀行の外で主水と関わる人々も登場し、ドラマの世界観を豊かにしています。仁科亜季子演じる居酒屋「小料理珠蘭」の女将、石岡珠代は、主水の憩いの場を提供し、情報が集まる場所ともなります。加藤雅也演じる刑事の梅沢剛は主水の知人であり、事件捜査に協力することもあります。また、山田明郷演じる鮮魚店の山崎勝太郎や、左時枝演じる和菓子店の村瀬照子など、高田通り商店街の人々が登場し、下町の人情や日常が描かれます。そして、笹野高史演じる謎の老人が時折現れ、物語に深みを与えます。

スタッフ

テレビドラマシリーズは、原作を江上剛氏、脚本を李正姫らが担当。監督は今井和久が主に務めています。制作はテレビ朝日とMMJが手がけています。原作者の江上剛氏自身も、ドラマにゲスト出演し、作品を盛り上げています。

まとめ

江上剛氏の『庶務行員 多加賀主水』シリーズは、銀行を舞台にした社会派ミステリーでありながら、主人公・多加賀主水の持つ多才な能力と人情味溢れる活躍を描くことで、幅広い読者・視聴者を楽しませています。組織の闇や現代社会の問題に鋭く切り込みつつも、最後は勧善懲悪のカタルシスを与えてくれる、魅力的な作品世界を築いています。

もう一度検索