庶民院 (イギリス)

庶民院（しょみんいん）

庶民院は、イギリスの二院制における下院に該当する議院で、正式には「House of Commons of the United Kingdom」と呼ばれます。この院は、貴族院と共にイギリス議会を構成し、政策決定や法律制定などにおいて重要な役割を果たしています。庶民院の会期は通年で開催されますが、必要に応じて休会が設けられることがあります。

議員構成と定数

庶民院の定足数は40人と規定されているものの、定足数確認動議が禁止されているため、実質的には議長と与野党から各1名の出席で審議が始まります。議員の定数は650人であり、これは2010年の選挙から維持されています。この定数は法律で定められていますが、選挙区の設定や人口の変動により若干の変化があり得ます。

2000年から適用された政党助成制度により、議席を持つ政党には政策開発のための助成金が支給されることになりました。しかし、シン・フェイン党のように議会への宣誓を拒否する政党には、この助成金は支給されません。議員一人当たり約9万人が代表されています。

選挙制度

庶民院の選挙は、一選挙区から一人の議員を選出する単純小[[選挙区制]]が採用されており、比較多数の原則に基づいています。20世紀の初めまで自由党と保守党が二大政党として君臨し、その後労働党と保守党が主要な政党として位置付けられています。選挙では労働党、保守党、自由民主党の3党が報道機関で並べて扱われますが、実際の政治的な選択肢は保守党と労働党が中心です。

2010年の総選挙では、保守党と労働党のいずれも単独過半数を獲得できず、保守党と自由民主党による連立政権が誕生しました。しかし、その後の公約の反故や政治不満の高まりを受け、イギリス独立党（UKIP）が支持を伸ばしました。2015年の選挙ではUKIPが得票率3位となりましたが、議席数は限られ、スコットランドにおいてはスコットランド国民党が勢力を拡大しました。

2016年のEU離脱国民投票の結果、UKIPは存在意義を喪失しましたが、労働党と自由民主党は若干態勢を回復しました。2019年の選挙では、労働党がEU離脱に対するスタンスを曖昧にした結果、惨敗し、保守党は単独過半数を確保しました。

代替投票制導入の試み

単純小[[選挙区制]]度のもとで自由民主党は議席率が得票率に比して低いことを問題視し、制度改革を求めています。2010年の選挙後、代替投票制導入の是非を問う国民投票が提案されましたが、市民の反発が強まり、2011年の国民投票では70%近い反対意見が示され、導入が見送られました。

地域ごとの特色

イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドからなる連合王国であり、それぞれの地域で議会議員の構成は異なります。イングランドでは保守党と労働党の対立が続いていますが、スコットランドやウェールズでは地域政党の存在感が増しており、特にスコットランド国民党の躍進が顕著です。北アイルランドでは主に地域政党が議席を占めています。

選挙資格及び任期

庶民院の議員は、18歳以上のイギリス国民またはイギリス連邦国民、アイルランド国民であり、居住要件を満たす必要があります。任期は通常5年ですが、国会解散により短縮されることがあります。2011年には任期固定制が導入されましたが、2022年に廃止され、従来の国王権限による解散が復活しました。

議長と役員

庶民院の運営には議長が重要な役割を果たしており、彼は議事運営を一手に引き受けます。議長は中立の立場を貫くため、政府の重鎮からは選ばれず、当然ながら任期は庶民院が解散するまでとなります。議長の選出方法は変遷を経ており、現在は全候補者から無記名投票によって選ぶ形が定着しています。副議長および院内総務も存在し、各々が議事運営に貢献しています。

議事運営と会議の様子

法案の審議には三読会制が導入されており、議事は日々活発に行われています。特に、議会が開かれる日は決まっており、議員は選挙区や国民の関心事について質問を行う機会も設けられています。庶民院の優越性は歴史的な背景により確立されており、現在もその伝統が引き継がれています。

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