廃帝 (北斉)

廃帝高殷の生涯

廃帝（はいてい）、本名高殷（こう いん）は、北朝の北斉にて2代目の皇帝として即位しました。彼は、文宣帝高洋の長男であり、北斉の建国と共に皇太子に立てられたことが彼の運命の始まりでした。若年ながらも優秀で、漢家の学問に通じていた高殷は、期待される存在でしたが、父である文宣帝にはその才能が評価されず、逆に疎まれてしまいます。

天保9年（558年）、彼は諸儒を招き、古典『孝経』の講義を行いました。この行為は、彼の知識と教養の高さを示すものでしたが、文宣帝の心情は冷ややかでした。ある時、高殷は父である文宣帝の命令に反抗し、囚人を斬らなかったために激怒した文宣帝から鞭打たれるという厳しい仕打ちを受けました。その結果、高殷は吃音を患い、精神的にも障害を負うこととなります。

天保元年（550年）に北斉が成立し、天保10年（559年）10月には文宣帝が崩御したことにより、高殷は皇帝として即位します。この時、彼は晋陽の宣徳殿で皇帝としての生活を始めました。彼の治世は、楊愔、燕子献、宋欽道といった名臣たちの補佐を受ける形で進んでいきました。即位の11月には、重要な政治ポジションに彼の側近を就任させ、周囲の信任を受けていくことが期待されました。

しかし、翌年の2月には、高演を太師に任命し、高湛を大司馬にすることで、彼らの権力を強化しました。この時、高演は詔を偽造し、楊愔や燕子献らを斬ってしまいます。これにより、高演は権力を掌握し、廃帝高殷の立場は急速に危険なものとなります。

特に、皇建2年（561年）9月には、彼自身が晋陽で不幸な運命に陥ることとなり、扼殺されるという悲劇的な結末を迎えました。彼の享年はわずか17歳であり、その若すぎる死は周囲の者たちに衝撃を与えました。

宗室および后妃

廃帝高殷に関連する宗室についても目を向ける必要があります。彼は李難勝（李祖娥の姪）や鄭氏などの后妃が存在していましたが、彼自身の短い生涯の中で家庭を築く余裕はなかったと考えられます。

伝記史料

廃帝高殷に関する情報は、主に『北斉書』巻五の帝紀や『北史』巻七の斉本紀に記載されています。これらの史料は、彼の生涯や治世、そして悲劇的な死についての理解を深めるための貴重な資料となっています。

廃帝高殷の命は短く、多くの困難と苦悩に満ちていましたが、彼の存在は北斉の歴史に記録され、後の時代に教訓を提供し続けています。

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