廃車 (自動車)

自動車の廃車：その意味、手続き、そしてその後

自動車における廃車とは、車両が本来の用途である人や物の輸送を終え、法的に車籍を抹消されることを指します。自動車リサイクル業界では、End of Life Vehicle（使用済み自動車）の頭文字を取り、ELVと略されることもあります。この記事では、廃車の原因から手続き、海外の状況、そして廃車を趣味とする人々まで、廃車に関する様々な側面を詳しく解説します。

廃車の原因

自動車が廃車となる理由は主に以下の3つに分類できます。

経年廃車: 老朽化や経年劣化により、修理費用が車両の価値を上回る場合。
事故廃車: 交通事故や自然災害（地震、台風など）により、車両が大きく損傷した場合。
用途廃車: トラブルや故障、または車両が不要になった場合。

経年廃車の詳細

自動車は適切な整備を行えば長期間の使用が可能ですが、経済的な理由から廃車を選択するケースがあります。

部品の生産終了や供給ルートの喪失により、修理が困難になった場合。
修理費用が中古車相場を上回る場合。
車検の時期が近づき、修理よりも買い替えを選んだ場合。
特殊な構造や性能を持つ車両で、維持費が嵩む場合。
不人気車や年式が古い、走行距離が多いなどの理由で買い手がつかない場合。
法規制の変更で使用できなくなった場合。
キャブレター車の整備ができるメカニックが減少し、整備環境が失われた場合。

廃車の流通

廃車後の車両は、解体業者や中古車として流通します。解体された車両は、部品ごとに分解され、中古部品やリビルド品として販売されたり、材質ごとに分別され、新たな製品の原料として再利用されます。また、過去にはプレス機で圧縮して魚礁として利用された例もあります。

その他の利用方法

破壊を前提とした興行や撮影（劇用車）に使用。
水没や火災テスト、ガードレールなどの性能試験の実験台として利用。
ドリフト走行練習用の「ミサイル」として利用。

日本における廃車

かつて日本では「10年・10万kmは寿命」という標語がありましたが、現在では車両の寿命が延びています。これは、舗装道路の増加や鋼板の防錆性能の向上などが要因として挙げられます。

抹消登録の手続き

日本で自動車を廃車するには、抹消登録の手続きが必要です。抹消登録には、永久抹消登録と一時抹消登録の2種類があります。

永久抹消登録: 車両の解体を前提とした手続きで、再登録はできません。
* 一時抹消登録: 一時的に車両の使用を停止する場合の手続きで、再登録が可能です。

ローンが残った車の廃車

所有者名義が自分になっている場合は、ローンが残っていても廃車手続きが可能ですが、所有権が信販会社やディーラーにある場合は、事前に所有権解除の手続きが必要です。

廃車後の手続き

廃車手続きが完了すると、自動車税、自動車重量税、自賠責保険の還付金が返還されます。

廃車業者とのトラブル

廃車業者の選び方によっては、不当な扱いを受けることがあります。契約前にしっかりと内容を確認し、信頼できる業者を選びましょう。

欧米における廃車

ヨーロッパでは、自動車メーカーが共同で廃車の引き取りやリサイクルに取り組んでいます。EUでは、廃車のリサイクルに関する指令が制定され、各国で法制化が進んでいます。

中国における廃車

中国では、廃車回収に関する法規制が整備されていますが、小規模な解体業者が多く、正規ルートで回収される廃車が少ないなどの課題があります。

廃車趣味：草ヒロの世界

自動車趣味の一つとして、放置された車両を探索し、鑑賞する「草ヒロ」と呼ばれるジャンルがあります。これは、廃墟探訪と同様に、滅びの美学や黄昏の風景を味わうことを目的としています。自動車設計の進化や工業デザインの変遷を学ぶという側面もあります。

廃車は、単なる不要物ではなく、資源として再利用されたり、新たな価値を生み出す可能性を秘めています。また、文化的な側面から見ても、人々の記憶や歴史を刻む存在として、注目されています。

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