廉政公署

廉政公署（Independent Commission Against Corruption, ICAC）

廉政公署は、1974年に設立された香港の汚職捜査機関です。返還前は「総督特派廉政専員公署」と呼ばれていました。長官は廉政専員であり、行政長官によって指名され、中央政府が任命します。廉政公署は政府部門の一つですが、行政長官に対して直接責任を負う独立した機関です。

概要

廉政公署は、公務員などの公職による汚職や不正行為に加え、経営者の同意があれば民間企業における背信行為も捜査対象としています。捜査は、市民からの通報や密告に基づいて行われるほか、廉政公署独自の判断でも開始されます。被疑者の逮捕や必要に応じた武器の携帯も認められており、警察の協力を得ることなく起訴まで進めることが可能です。この独立性が、廉政公署の大きな特徴となっています。

設立の経緯

1970年代以前の香港では、警察官の汚職が蔓延しており、警察内部に汚職取り締まり部門が設けられたものの、自浄作用は十分に機能しませんでした。この状況を打開するため、警察と対峙する形で独立した汚職取り締まり機関が必要とされました。

廉政公署設立のきっかけとなったのは、1973年に発覚した英国籍の警察官ピーター・F・ゴッドバーによる汚職事件です。ゴッドバーは430万香港ドルを持ち逃亡し、香港からの出国禁止にもかかわらずイギリスへ逃亡しました。当初、巨額の財産を持つことが不自然であるという事実しか判明せず、イギリス本国での逮捕は難航しました。この事件は香港市民の強い反感を買い、抗議デモが起こりました。当時のマクレホース総督は、調査委員会を設置し、その提言に基づいて廉政公署の設立が立法局で可決されました。

その後、収賄罪で収監されていた同僚の証言により、ゴッドバーの罪状が解明され、逮捕を経て1975年に香港へ移送されました。しかし、廉政公署による厳しい取り締まりに対し、警察官の反発も大きかったため、1977年には警察官による抗議デモが廉政公署前で行われました。結果として、過去の比較的軽微な賄賂については不問とする妥協策が取られました。

関連項目

国民権益委員会
高位公職者犯罪捜査処
汚職撲滅委員会

外部リンク

公式ウェブサイト (英語)
公式ウェブサイト (繁体字中国語)
公式ウェブサイト (簡体字中国語)

もう一度検索