高位公職者犯罪捜査処

高位公職者犯罪捜査処（公捜処）について

高位公職者犯罪捜査処（こういこうしょくしゃはんざいそうさしょ、通称：公捜処）は、大韓民国における高位公職者の不正腐敗を専門に捜査する独立機関です。この機関は、大統領、国会議長、大法院長といった要職にある人物や、その家族の犯罪行為を捜査対象としています。さらに、判事や検事などの法曹関係者が関与する事件においては、起訴する権限も有している点が特徴です。

設立の背景

20世紀後半から21世紀にかけて、世界各国で汚職や不正を専門に取り締まる独立機関が設立されてきました。シンガポールの汚職調査局、香港の廉政公署、イギリスの重大不正捜査局などがその例です。高位公職者犯罪捜査処は、これらの機関の流れを汲むものであり、韓国における高位公職者の不正行為に対する国民の不信感の高まりを背景として設立されました。

捜査対象

公捜処の捜査対象は非常に広範囲に及びます。大統領、国務総理、国会議員、大法院長、大法官、各国家機関の上級職員、軍部の将官クラス、各道知事、ソウル特別市長などの主要な地方公共団体の首長だけでなく、これらの高位公職者の家族も含まれます。対象者数は全体で7,000人を超えるとも言われています。

公捜処は、捜査対象の事件が他の捜査機関と競合する場合、当該機関に事件の引き継ぎを要請することが可能です。この権限は、高位公職者が関与する事件をより効率的かつ徹底的に捜査するためのものです。

設立までの経緯

公捜処の設立構想は、1996年に左派市民団体「参与連帯」によって初めて提唱されました。その後、長年にわたり議論が重ねられ、2017年の大統領選挙で文在寅大統領が公約に掲げ、設立に向けて大きく前進しました。

2019年12月30日、「高位公職者犯罪捜査処の設置及び運営に関する法律」案が国会で可決され、2021年1月21日に正式に発足しました。この設立は、検察の権力を牽制し、より透明性の高い社会を目指すための重要な一歩として評価されています。

設立に対する賛否両論

公捜処の設立に対しては、賛否両論がありました。設立を支持する側は、これまで検察が独占していた起訴権を分散させ、権力に対する牽制と均衡を促すことができると主張しました。一方で、反対する側は、公捜処自身が新たな権力機関となり、政治的な道具として利用される危険性を指摘しました。一部のジャーナリストは、公捜処が政権に有利に機能し、司法への圧力を強める可能性があると警鐘を鳴らしています。

具体的な捜査対象

公捜処の捜査対象となるのは、高位公職者本人の犯罪行為に加え、その家族が職務に関連して犯した犯罪も含まれます。対象となる家族の範囲は、原則として配偶者と直系尊卑属です。ただし、家族の場合は、高位公職者の職務に関連した罪に限られます。

立件された人物と問題点

公捜処によって実際に立件された人物には、現職の大統領である尹錫悦氏が含まれます。また、2021年末には、民間人の通信記録を不当に照会していた疑惑が浮上し、批判を浴びました。照会対象には、野党議員やメディア関係者など、政権に批判的な人物が多数含まれていたことが明らかになっています。

結論

高位公職者犯罪捜査処は、韓国社会における高位公職者の不正腐敗を根絶するための重要な機関です。しかし、その設立には多くの議論と懸念があり、今後もその活動を注視していく必要があります。


関連情報

国民権益委員会: 韓国の政府機関の一つで、公務員の不正行為などを監視しています。
廉政公署: 香港の汚職捜査機関で、公捜処設立のモデルの一つとなっています。
検察庁 (大韓民国): 従来起訴権を独占していた機関であり、公捜処の設立によってその権限の一部が制限されることになりました。
秋美愛、曹国: 公捜処設立に関連して議論を呼んだ人物として挙げられます。


外部リンク
고위공직자범죄수사처 설치 및 운영에 관한 법률
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