延

延（のび）の概念とその背景

中世日本の計量における「延（のび）」、または「斗出（はかりだし）」は、枡のサイズの不均一性から生じる計量の増加分を指します。この現象は平安時代後期から見られるようになり、当時の社会状況と密接に関連しています。

背景

平安時代後期、朝廷による度量衡の統制が緩み、地方の国衙や荘園ごとに異なる枡が採用されるようになりました。このことは、計量において混乱を招いたと捉えられています。国司や領主によってそれぞれの実情に応じた枡が使用されるようになり、どのように評価されるかについては、さまざまな見解が存在します。

複雑化する枡の使用

この時期、複数のサイズの枡が用いられることで、「斗升違目」という異なる容量の差が生じることが頻繁にありました。例として、荘官が年貢を徴収する際に利用する「荘枡」と、荘園の領主へ上納する際に使われる「領主枡」や「下行枡」の間で、同じ「1升」とされるものであっても、実際の容積が異なることがしばしば起こりました。このため、荘枡で計量した米が領主枡で再計量される際に、実質的な量が同じでありながら、誤差によって「1升2合」となることもありました。

延の発生

例えば、荘枡で収集した1升の米が領主枡で再計量されると、同量であっても「1升2合」と計測されるケースがありました。このとき、上納するべき米は領主枡での「1升」として扱われ、余分に計量された部分つまり2合が延として生じます。これにより、延は無駄に発生することになり、農民には返却されることもなく、徴税を担当した荘官の利益として扱われました。

課税への影響

延や斗出に関して、年貢の一部として徴収された交分は、延と同一視されることが多く、どちらも同じ現象を指すとされる見解があります。ただし、これとは反対に、意図的に交分を上乗せするために作られた特殊な枡が存在することもあり、これによりさまざまな計量の差異に基づく複雑な課税システムが形成されました。

結論

中世日本の延（のび）や斗出は、計量の混乱が経済や社会へ与える影響を物語る重要な要素です。当時の日本社会において、度量衡は単なる計測の手段ではなく、様々な政治的、経済的な戦略に深く結びついていたことが示されています。各地域で使用される枡の多様性は、異なる利害関係を生み出し、結果として荘官の収入や農民への影響をもたらしたのです。

このように、延の現象を理解することは、当時の社会構造や経済分野における複雑さを理解するために不可欠です。

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