建元正弘

建元 正弘

日本の経済学者である建元正弘（たてもと まさひろ）は、1924年に岡山県で生まれ、1997年にその生涯を終えました。近代経済学および国際経済学を専門分野とし、特に国際貿易や国内・国際間の経済均衡に関する計量的な分析手法の発展に貢献しました。大阪大学名誉教授としての功績は広く知られています。

彼の学究生活は、まず郷里の岡山県で始まりました。津山中学校を経て第二岡山中学校を卒業後、名古屋高等商業学校に進学。太平洋戦争終結後、京都大学経済学部で学び、1950年に卒業しました。その後、大阪大学より経済学博士号を授与されています。

大学卒業後、1950年には名古屋大学経済学部で文部教官としてキャリアをスタートさせ、助手、講師、助教授と昇任しました。この間、1951年にはオレゴン大学への留学を経験しています。1956年からは大阪大学経済学部附属社会経済研究室（現在の社会経済研究所）の助教授として移籍し、研究活動に精力的に取り組みました。大阪大学在籍中の1961年から1962年にかけては、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールにも留学し、海外での知見を深めています。1965年には京都大学経済研究所に移り、助教授、そして資源経済研究部門の教授に昇任しました。

1972年、再び大阪大学に戻り、経済学部の教授に就任。金融論講座を担当した後、大学院公共経済学専攻の公共経済学講座を担当しました。1977年からは2年間、大阪大学経済学部長として学部運営の重責を担いました。大阪大学を離れた後は、帝塚山大学の教授を務め、晩年まで教育・研究活動を続けました。

建元教授の研究は、理論と実証の両面から日本の経済、特に国際経済や貿易構造を深く分析することに特徴がありました。計量経済学の手法を駆使し、複雑な経済現象のメカニズムを解明しようと試みました。彼の研究成果は、多数の学術論文や著作として発表されています。

また、学術研究にとどまらず、社会への貢献も積極的に行いました。1980年には関西経済研究センターの理事に、1984年には日本経済研究センターの理事に就任するなど、主要な経済研究機関の運営にも関わりました。これらの活動を通じて、研究成果を広く社会に還元し、日本の経済政策や産業構造の議論に影響を与えました。

主な著作としては、『貿易の計量的分析』、『日本経済を生かすもの-企業と政府のあり方-』、『外国貿易と国際収支-近代経済理論による分析-』、『沙羅利満氏の経済教室』といった単著があります。また、上野裕也氏との共著『経済行動の計量的分析』、内田光穂氏との共著『円切り上げ-影響と展望-』、小泉進氏との共著『所得分析』、真継隆氏との共著『社会人のための計量経済学』など、多くの研究者との共同研究の成果も出版しています。さらに、渡部経彦氏や市村真一氏、熊谷尚夫氏らとの編著も多数あり、多岐にわたるテーマについて経済学の最新の知見を紹介・解説することにも力を注ぎました。

これらの活動を通して、建元正弘氏は日本の近代経済学、特に国際経済学および計量経済学分野の発展に多大な貢献を残しました。その研究と思想は、現在も多くの経済学者に影響を与え続けています。

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