建安郡

建安郡

建安郡は、三国時代から唐代にかけて、現在の福建省一帯に設置されていた中国の郡です。その成立から消滅までの歴史は、中国の地方行政制度の変遷を物語る上で重要な事例と言えます。

建安郡の成立

建安郡が初めて設置されたのは260年（永安3年）のことです。三国の呉が、会稽郡の南部を分割して新たに建安郡を立てました。この時、建安郡は揚州に属していました。この設置により、呉は南部の統治を強化し、勢力拡大を図ったと考えられます。

晋代の建安郡

晋の時代になると、建安郡は建安・呉興・東平・建陽・将楽・邵武・延平の7県を管轄する広大な郡となりました。291年（元康元年）には、揚州が分割されて江州が新設されると、建安郡は江州に編入されました。これにより、建安郡は新たな行政区画の一部として、その役割を担うことになります。

南朝時代の建安郡

南朝の宋の時代にも、建安郡は存続し、建安・呉興・将楽・邵武・建陽・綏城・沙村の7県を管轄していました。南朝斉の時代も同様です。この時期、建安郡は南朝の支配下で、地域の安定と発展に貢献しました。

南朝陳の時代には、閩州が置かれ、建安郡は閩州に属しました。その後、閩州は豊州と改称されました。これにより、建安郡はより上位の行政区画の一部として位置づけられることになります。

隋代の建安郡

589年（開皇9年）、隋が南朝陳を滅ぼすと、建安郡は一旦廃止され、泉州に編入されました。しかし、606年（大業2年）に泉州が閩州と改称され、さらに607年（大業3年）に州が廃止されて郡が置かれると、閩州は再び建安郡と改称されました。この時、建安郡は閩・建安・南安・竜渓の4県を管轄しました。このように、隋代には郡名が復活し、行政区画の再編が行われました。

唐代の建安郡

621年（武徳4年）、唐により建安郡は泉州と改められ、建安郡建安県には建州が置かれました。742年（天宝元年）には、建州が建安郡と改称されましたが、758年（乾元元年）に再び建州と改称され、建安郡の呼称は歴史から姿を消しました。唐代には、郡名が二転三転し、最終的に建州という名前に落ち着きました。

建安郡は、その成立から消滅までの間に、所属する行政区画や管轄する県が変化し、その名称も何度か変更されました。この変遷は、中国の地方行政制度の複雑さと、時代の流れとともに変化する社会情勢を反映しています。建安郡の歴史を紐解くことは、中国史をより深く理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

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