建築・環境デザイン学科

建築・環境デザイン学科（けんちく・かんきょう-がっか）

建築・環境デザイン学科は、日本の高等教育機関である大学に設置されている専門分野の一つです。この学科の大きな特徴は、伝統的な建築学の枠を超え、建物の設計や構造といった要素に加え、それが立つ場所の周辺環境、さらには都市や地域といったより広範なスケールのデザインや計画までを教育・研究の対象としている点にあります。

学びの領域

この学科では、主に以下の二つの柱を融合的に学びます。

1. 建築分野:
建築計画、意匠設計、建築構造、建築設備、建築史といった、建築物を造るために必要な基礎知識と応用技術を習得します。単に安全で機能的な建物だけでなく、美しさや文化的価値も兼ね備えた建築をデザインする能力を養います。
2. 環境デザイン分野:
ランドスケープデザインを中心に、都市デザイン、地域計画、環境生態学、環境工学、環境心理学など、人間を取り巻く外部環境をデザイン・計画するための多様な知識とスキルを学びます。公園、庭園、街路、広場といった具体的な外部空間のデザインから、都市全体の緑地計画、河川や自然環境の保全計画まで、幅広いスケールを扱います。

融合的なアプローチ

建築・環境デザイン学科では、建築物と外部環境を切り離して考えるのではなく、相互に関連し合う一体のものとして捉える視点を重視します。建物はその環境の一部であり、また環境は建物のあり方に大きな影響を与えます。この相互作用を理解し、調和のとれた空間全体をデザインする能力、すなわちサイトデザインやアーバンデザインといった領域横断的な視点を育むことが、この学科の教育の核となります。

持続可能な社会の実現が喫緊の課題となる現代において、単体の建築物の性能だけでなく、エネルギー効率、自然素材の活用、生物多様性への配慮、コミュニティの活性化といった、環境負荷を低減し、人々のウェルビーイングに貢献するデザインが求められています。この学科では、このような現代的な課題に対応できる、幅広い視野と専門性を持った人材育成を目指しています。

設置大学

現在、日本の大学で建築・環境デザイン学科という名称を冠して設置されている例としては、東北芸術工科大学が挙げられます。

過去には、学科名称は同じではないものの、同様の教育理念を持つ学科が以下のような大学に存在しました。

長岡造形大学 造形学部
東海大学 芸術工学部

また、大学以外にも、建築設計や環境デザインに関連する専門的な教育を行う専修学校にも、類似の教育内容を持つ学科が見られます。例えば、かつては山形デザイン専門学校の文化教養専門課程に環境デザイン科が、青山製図専門学校の製図専門課程（工業）の建築設計デザイン科に環境デザインコースが設置されていました。

関連分野

建築・環境デザイン学科と関連の深い分野としては、以下の学科や研究領域があります。

建築学科: 建築物の設計、構造、施工などに特化した学科です。
環境デザイン学: 環境デザイン全般を扱う学問分野であり、これを学科名としている大学もあります。建築・環境デザイン学科は、環境デザイン学の中でも特に建築との関わりが深い分野といえます。
* ランドスケープ学科: ランドスケープデザイン、造園学に特化した学科です。大学院にはランドスケープ系の研究室が設置されている場合もあります。

これらの関連分野との連携や比較を通じて、建築・環境デザイン学科の独自性と学際的な性格がより明確になります。建築物のデザインと外部環境のデザインを統合的に学び、人と環境が共に豊かになる空間創造に貢献できる専門家を育成することが、この学科の重要な役割です。

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