弁柄

弁柄（べんがら）について

弁柄、または酸化鉄赤とは、赤色の顔料及び研磨剤であり、その基本的な成分は酸化第二鉄（Fe₂O₃）です。この物質は、特に高い着色力と安定性を持つため、さまざまな用途に利用されてきました。

顔料としての利用

日本での呼称「弁柄」は、江戸時代にインドのベンガル地方から輸入されたことに由来しています。江戸時代には、特に吹屋と呼ばれる岡山県の地域で生成され、伊万里焼や輪島塗などの伝統工芸品に多く使われました。また、吹屋の家々の木材は、弁柄で塗られた特徴的な赤褐色の外観が今も見られます。現在の弁柄は、天然の赤鉄鉱に加え、合成された工業用も多く流通しています。これにより、Color Index Generic Nameの評価では、合成酸化鉄赤は「Pigment Red 101」、天然酸化鉄赤は「Pigment Red 102」とされています。

弁柄の製造工程

弁柄の製造は複雑な工程を経て行われます。具体的には、まず鉄鉱石を砕き、硫黄分を取り除きます。その後、不純物を沈殿させて「緑礬」という結晶を生成し、この結晶を焼きます。この焼成は約700度で2日間行い、続いて水洗いして粉状にします。この粉をネルソフトの装置で3回洗浄することで、弁柄の成分が得られます。最終的には、天日干しを経て乾燥させて完成となります。

種類と特性

弁柄には、赤土ベンガラ、丹土ベンガラ、ローハベンガラなど多様な種類がありますが、特にローハベンガラは粒子が球状で色相が非常に優れているため、特に人気があります。この名前は「緑礬」に由来し、過去には朱辰砂の代用品としても用いられていました。弁柄は赤色の顔料としては古くから知られ、その用途は多岐にわたります。

現代における利用

現今の弁柄は、さまざまな工業分野での利用のほか、伝統的な民家の木材の塗装にも用いられています。日本では、赤色ではなく褐色の顔料としての認識が強いですが、着色力や耐久性が高いため、安価で無毒な塗料として人気があります。また、磁器の絵付けや漆器、歴史的建物の保護などにも利用されており、特に文化財の修復などで高品質なローハベンガラが重宝されています。

研磨剤の役割

弁柄はかつて光学ガラスの研磨剤として広く使用されていました。特に「紅」と呼ばれるこの研磨剤は、「紅を付ける」といった表現で、ガラス素材の研磨を指すこともありましたが、近年は酸化セリウムなどの新しい研磨剤に取って代わられつつあります。それでも、弁柄の名残として「白紅」という言葉が使われることがあります。

結論

弁柄は日本の工芸と文化に深く根付いた顔料であり、その歴史的背景や多様な用途は、今なお多くの人々に支持されています。

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