弦楽セレナード (スク)

ヨセフ・スクによる「弦楽セレナード変ホ長調 作品6」（チェコ語: Serenáda pro smyčcové nástroje）は、1892年に書かれた弦楽合奏のための重要な作品です。このセレナードは、当時若手作曲家であったスクの名を広く知らしめる契機となった記念碑的作品であり、彼の初期を代表する傑作として親しまれています。全曲を通して約25分程度の演奏時間を要します。

作曲の背景

この作品の誕生には、スクがプラハ音楽院で師事していたアントニン・ドヴォルザークとの深い関わりがあります。ドヴォルザークは才能ある弟子スクを大変可愛がり、彼が学業を終えた1892年の夏、自身の別荘があるヴィソカー・ウ・プシーブラミへスクを招きました。この滞在中、ドヴォルザークは、スクがしばしば短調の憂鬱な雰囲気の楽曲を好む傾向があることを指摘し、気分転換として人生の明るく肯定的な面に目を向けた作曲を試みるよう助言を与えました。さらに、この機会にドヴォルザークは娘のオチルカをスクに紹介しました。スクはオチルカにたちまち心を奪われ、後の1898年には結婚に至ります。故郷クレチョヴィーチェに戻ったスクは、恩師からの示唆と、新たに芽生えたオチルカへの愛情という二重のインスピレーションを得て、本作の作曲を開始しました。作曲は順調に進み、第3楽章までは夏の間に一気に書き上げられたと伝えられています。終楽章については、適切な主題を見つけるのにやや時間を要しましたが、一度着想を得ると、わずか2日間で完成させることができたと言われています。作品は1896年、師ドヴォルザークとヨハネス・ブラームスの強力な推薦を受け、ドイツの著名な出版社であるジムロック社より出版され、国際的な評価への道が開かれました。

初演

本作の初演は二段階で行われました。まず、1893年12月17日には、チェコ南部の都市ターボルにて、スク自身の指揮により前半の2楽章のみが披露されました。全曲の完全な形での初演は、翌1894年2月25日にプラハにて行われました。この時の演奏は、スクの母校であるプラハ音楽院のオーケストラが担当し、指揮はスクのヴァイオリンの師であったアントニン・ベンネヴィツが務めました。

編成と構成

本作品は、一般的な弦楽合奏の編成である弦楽五部、すなわちヴァイオリン（第1、第2）、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのために書かれています。

構成は全4楽章から成り、それぞれが独自の性格を持っています。

第1楽章：Andante con moto
4分の4拍子。三部形式。力強く行進曲のような性格を持つ主部と、対照的に優美で叙情的な中間部が配置されています。

第2楽章：Allegro ma non troppo e grazioso
4分の3拍子。三部形式。軽快で優雅な、ワルツを思わせるような楽章です。

第3楽章：Adagio
4分の4拍子。三部形式。深みのある緩徐楽章で、主要な主題はチェロ独奏によって提示され、中間部の主題はヴァイオリンによって歌われます。

第4楽章：Allegro giocoso, ma non troppo presto
2分の2拍子。ロンド風の形式を取り、遊び心に満ちた躍動感あふれる楽章です。楽章の終盤近くには、第1楽章冒頭で聴かれた主題が回想される形で再び現れ、全曲に統一感を与えています。

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