変ホ長調

変ホ長調（へんホちょうちょう）は、西洋音楽における調の一つで、変ホ (E♭) 音を主音とする長調です。調号はフラット3箇所 (B, E, A) で表されます。

音階と和音

変ホ長調の音階は以下のようになります。

変ホ (E♭)
ヘ (F)
ト (G)
変イ (A♭)
変ロ (B♭)
ハ (C)
ニ (D)
変ホ (E♭)

主要な和音は以下の通りです（自然長音階に基づいています）。

I度: 変ホ長調 (E♭ major)
II度: ヘ短調 (F minor)
III度: ト短調 (G minor)
IV度: 変イ長調 (A♭ major)
V度: 変ロ長調 (B♭ major)
VI度: ハ短調 (C minor)
VII度: 減少和音 (D diminished)

楽譜上では、異名同音的に異なるコードネームが用いられることもあります。

特徴

象徴性: フラット3つの調号から、古くは三位一体との関連が考えられていました。
楽器との相性: チェロやヴィオラでは、調弦の都合上、明るく響きやすい調とされています。また、アルト・サクソフォンやバリトン・サクソフォンなどのE♭管楽器、変ロ調 (B♭管) の管楽器にとっても演奏しやすい調です。管楽器は一般的にフラットが多い方が演奏しやすいとされます。
作曲家の見解: シャルパンティエは「残酷さや厳しさを表す」と述べ、マッテゾンは「非常に悲愴な感じを具えている。真面目で、しかも訴えかけるような性質を持つ」と評しています。
古典派時代のホルン協奏曲: 当時、ホルン協奏曲で頻繁に用いられた調性でした。ニ長調よりも低い調では、完全にストップした際のピッチの上昇が小さく、半音階を演奏しやすい反面、楽器の反応が鈍くなるため、ソロ奏者には敬遠されることもありました。一方、ト長調よりも高い調では、ストップ時のピッチ上昇が大きくなり、ソロ演奏には不向きでした。
吹奏楽: 変ロ長調と並んで、吹奏楽で頻繁に用いられる調の一つです。
ベートーヴェンとの関連: ベートーヴェンが生涯愛した調であり、交響曲第3番「英雄」、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、弦楽四重奏曲第12番など、多くの名曲が変ホ長調で作曲されています。ハ短調（フラット3つ）も同様に、ベートーヴェンの重要な作品が多く存在します。交響曲第3番「英雄」の完成以降、「英雄の調」というイメージが定着し、リヒャルト・シュトラウスは交響詩「英雄の生涯」を作曲しています。

変ホ長調の曲の例

ベートーヴェン：交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン：ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ベートーヴェン：弦楽四重奏曲第12番
リヒャルト・シュトラウス：交響詩「英雄の生涯」

（詳細はCategory:変ホ長調を参照）

関連項目

交響曲変ホ長調

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