弦楽五重奏曲第2番 (メンデルスゾーン)

弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 作品87, MWV R 33

この弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 作品87, MWV R 33は、ドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンによって1845年に書かれた室内楽曲です。ヴァイオリン2挺、ヴィオラ2挺、チェロ1挺という編成のために作曲されました。

作曲の背景

1840年代半ば、メンデルスゾーンは極めて多忙な時期を過ごしていました。1843年にはライプツィヒ音楽院の設立に深く関わり、運営に奔走する一方、翌1844年には3度目となるイギリス訪問を果たすなど、過密なスケジュールに追われていました。1844年の秋頃にはようやく活動は落ち着きを見せますが、連続する激務は彼の心身を深く疲弊させていました。さらに、妻セシリアも疲れを見せ、子どもたちも病み上がりという状況でした。このような状況を受け、メンデルスゾーンは心身のリフレッシュを図るため、同年の11月にフランクフルトへ療養に赴き、翌1845年の8月まで比較的長期にわたって滞在することになります。

本作は、まさにこのフランクフルトでの静養期間中に筆が進められ、比較的短期間のうちに完成に至ったとされています。静養中の1845年4月には、彼の親しい友人であり高名なヴァイオリニストであるフェルディナンド・ダヴィッドがメンデルスゾーンを訪ねました。二人は、前月の3月にライプツィヒで初演されたばかりの傑作『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調』（作品64）について語り合ったほか、その年の4月に完成したばかりの『ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調』（作品66）や、それ以前に作曲された弦楽四重奏曲などを共に演奏して過ごしたと言われています。このような音楽的な交流が、メンデルスゾーンの内に新たな創作意欲を掻き立て、やがてこの弦楽五重奏曲の作曲へと深く結びついたと考えられています。

出版

完成されたこの作品ですが、残念ながらメンデルスゾーンが存命中に楽譜として世に出ることはありませんでした。彼の死後、1851年にライプツィヒのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から初めて出版され、広く知られるようになりました。

楽曲構成

全4楽章で構成されており、全体の演奏時間は約26分です。

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
変ロ長調、2分の2拍子（アラ・ブレーヴェ）。躍動感あふれる主題を持つソナタ形式の楽章です。

第2楽章 アンダンテ・スケルツァンド
ト短調、8分の6拍子。アンダンテの速度指定の中にスケルツォの性格が求められる、三部形式の楽章です。

第3楽章 アダージョ・エ・レント
ニ短調、4分の2拍子。深く内省的な雰囲気を持ち、アダージョとレントという二つの速度表示を持つ三部形式の楽章です。

第4楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
変ロ長調、4分の4拍子。非常に速く活発なテンポで始まり、自由なソナタ形式によって書かれた終楽章です。

本作は、メンデルスゾーン後期の充実した創作活動の中で生まれた作品であり、美しい旋律と精緻な構成が見事に融合した名作として、今日でも多くの演奏機会を得ています。

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