張光前

張光前（ちょう こうぜん、1583年 - 没年不詳）は、明代末期の官僚であり、字を爾荷、号を㟊西と称しました。彼の出自は沢州にあり、父は張思烈です。

1610年（万暦38年）に科挙に合格し、進士の学位を得た張光前は、翌1611年（万暦39年）に蒲圻県の知事に任命され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、安粛県の知事に転任しますが、わずか4ヶ月後には中央に引き抜かれ、吏部験封主事という役職に就任しました。彼は順調に昇進を重ね、文選員外郎や稽勲郎中といった要職を歴任しました。しかし、何らかの理由により一度は官を辞し、公務から離れることとなります。

1624年（天啓4年）、趙南星が吏部尚書に就任すると、張光前は文選郎中として再び中央の舞台に返り咲きました。しかし、この復帰が彼の運命を大きく左右することになります。当時、宦官の魏忠賢が絶大な権力を握っており、趙南星は魏忠賢の政敵と見なされていました。趙南星の推挙で任用された張光前も、魏忠賢一派から敵視されるようになり、天啓帝の意に反する者として非難されることになります。張光前は、この不当な扱いに対して何度も反論の上疏を行いますが、その声は届くことはありませんでした。結果として、彼は官位を3級も降格させられ、地方の役職に左遷されてしまいます。

翌年、張光前の兄である右布政使の張光縉も、魏忠賢の側近である門克新の弾劾を受けて官爵を剥奪されました。兄弟そろって、魏忠賢一派に逆らったために失脚したとして、世間はその顛末を大いに噂しました。

1628年（崇禎元年）、張光前は光禄寺少卿として再び中央に呼び戻されますが、彼はこの辞令を拒否し、赴任しませんでした。しかし、1630年（崇禎3年）には太常寺少卿として再び任官を受け、後に大理寺少卿にまで昇進しました。その後、張光前は度重なる辞任の申し出を行い、最終的には官を辞して故郷で生涯を終えました。

張光前には二人の息子がおり、それぞれ張肇隆と張肇陽といいます。

張光前の生涯は、『明史』巻242 列伝第130に詳しく記されています。この歴史書は、彼の官僚としてのキャリアと、権力闘争の渦中で信念を貫いた姿を後世に伝えています。

張光前は、激動の時代を生きた官僚の一人として、その名前と生き様は歴史に刻まれています。彼は、不当な権力に屈することなく、自らの信念を貫いた人物として、後世に語り継がれることでしょう。

もう一度検索