張州雑志

張州雑志（ちょうしゅうざっし）

張州雑志は、尾張藩士、内藤正参によって書かれ、赤林信定によって編纂された地誌です。尾張徳川家の第9代藩主である徳川宗睦の命を受けて、正参は安永年間（1772年 - 1780年）にかけてその領土を詳しく調査し、その成果を記録しました。内藤正参は、狩野派の絵師でもあったため、彼の記録には多くの絵が添えられているのが特徴です。

正参は天明8年（1788年）に亡くなりますが、彼が生前に残した原稿や資料があり、これを元に赤林信定が全百巻本としてまとめました。この完成された作品は、寛政元年（1789年）に藩主の宗睦に献上されました。しかし、その内容はすぐには広く一般に公開されることはなかったため、明治時代を迎えるまで秘蔵されていました。

後に、名古屋市の蓬左文庫に保管され、その重要な文化財としての地位が確立されます。これにより、張州雑志は尾張地域の地理や歴史に関心を持つ人々にとって貴重な資源となりました。

近代に入り、1975年（昭和50年）には愛知県郷土資料刊行会によって全12巻の形で再刊行されました。この刊行は、特に地域の過去を知る手段として評価されています。また、1969年（昭和44年）には熱田神宮によって『張州雑志抄』という抄訳が発行されており、さらに広い層の人々がこの資料にアクセスできるようになりました。

張州雑志はその豊富な内容だけでなく、絵画も多く含まれるため、視覚的にも楽しめる地誌であり、日本の地方の歴史を知る上で欠かせない資料です。特に、尾張藩の土地や、当地の自然、人々の暮らしぶりが詳細に描かれており、当時の文化や社会の様子がうかがえます。

このように、張州雑志はただの地理的な記録にとどまらず、当時の人々の考えや生き方をも伝える貴重な歴史的資料ですが、今後の研究によりさらにその価値が見直されていくことが期待されています。

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