張瑄

張瑄（ちょうせん、1417年 - 1494年）は、明代中期に活躍した官僚です。字（あざな）は廷璽（ていじ）、号は古愚（こぐ）、安拙翁（あんせつおう）、観庵（かんあん）と称しました。本貫は応天府江浦県（現在の江蘇省南京市浦口区）にあります。

生い立ちと初期のキャリア

張瑄は、永楽15年（1417年）7月7日に、張俊民の子として生まれました。幼少期から学問に励み、姉の夫である李侃に経学を学びました。正統6年（1441年）に郷試に合格し、翌正統7年（1442年）には進士に及第しました。

進士となった張瑄は、正統9年（1444年）に刑部四川司主事に任じられました。その後、父の死によって一時的に官を辞し喪に服しますが、景泰2年（1451年）に復職、刑部湖広司主事に転じます。さらに景泰3年（1452年）には、刑部湖広司員外郎、そして冬には刑部四川司郎中へと昇進しました。

地方官としての活躍

景泰4年（1453年）、張瑄は吉安府知府に転じます。吉安府では、巫を尊び、土俗の神像を崇拝する風習が強く残っていましたが、張瑄はこれらの神像を水中に沈めてしまいました。この行為に対して、神の祟りを恐れる人々から神像を元に戻すよう求められましたが、張瑄は断固として拒否しました。その後、自身の病が快復したことから、人々の迷信を打ち破りました。また、景泰7年（1456年）に吉安府で飢饉が起こると、張瑄は上官の指示を待たず、自ら穀物倉を開いて民衆を救済しました。

天順4年（1460年）、張瑄は広東右布政使に抜擢されます。広西の反乱軍が越境し連山県を落とした際には、これを討伐して鎮圧しました。さらに、陽山県や新興県で発生した反乱も鎮圧するなど、武官としての才能も発揮しました。

天順8年（1464年）には、大藤峡の反乱軍が頻繁に属邑を陥落させた責任を問われ、一時的に俸給を停止されました。しかし、成化元年（1465年）に韓雍が大藤峡の反乱を鎮圧すると、張瑄は軍糧輸送の功績を認められ、銀幣を賜り、俸給も元に戻されました。この際、部下を監督し、予備の倉庫を62箇所、堤防を4600箇所も修築するなど、民政にも力を入れました。また広州府新会県の城壁12箇所を増築しました。成化4年（1468年）には、広東左布政使に進みました。成化5年（1469年）に張瑄が転任することになった際には、広東の軍民がこぞって留任を嘆願し、広東按察副使の陳濂らの請願により、引き続き広東左布政使を務めることになりました。

中央での活躍と晩年

成化8年（1472年）、張瑄は右副都御史となり、福建巡撫を務めました。福建では、林寿六や魏懐三らの反乱を鎮圧しました。さらに、浙江に隣接する福安県や寿寧県では、葉旺や葉春らの反乱軍が勢力を誇っていましたが、これを捕え処刑し、反乱を終結させました。

成化10年（1474年）秋には河南巡撫に転じ、成化11年（1475年）には、上京して流民の安撫や賢者の抜擢など18項目にわたる提言を行いました。また、黄河の決壊に対しては、災害救済を強く訴えました。

成化13年（1477年）、張瑄は北京に召還され、右副都御史・協理都察院事を務めました。成化14年（1478年）には、南京刑部左侍郎に転じ、刑部広東司主事を兼務しました。成化18年（1482年）には、南京刑部尚書に進み、最高位の官僚の一人となりました。成化20年（1484年）には、天文の異変を理由に弾劾を受けましたが、成化帝に不問に付されました。

成化23年（1487年）春に致仕し、弘治7年（1494年）9月24日に死去しました。享年は78でした。

著書

張瑄は文人としても優れており、多くの著書を残しました。

『五経研朱集』22巻
『香泉稿』1巻
『粉署余聞稿』1巻
『凝清集』8巻
『閩汴紀巡録』17巻
『奏議』8巻
『南征録』3巻
『安拙類稿』

これらの著書は、彼の学問的業績や官僚としての活動を後世に伝える貴重な資料となっています。

張瑄は、明代中期において、地方官として反乱鎮圧や民政に尽力し、中央では高官として活躍した人物であり、その生涯は多岐にわたる業績に彩られています。

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