張皇后 (漢恵帝)

張皇后：恵帝の皇后、権力闘争に翻弄された生涯

張皇后（ちょうこうごう）は、前漢の恵帝の皇后であり、その生涯は当時の政治情勢に大きく左右されました。父は宣平侯の張敖で、母は高祖劉邦と呂后の娘である魯元公主。恵帝にとっては、同母の姉にあたります。皇后の名は不詳ですが、嫣という説もあります。

皇后となるまで

魯元公主は張敖に嫁ぎ、娘と息子の張偃を産みました。劉邦の死後、恵帝が即位すると、呂后は自らの血縁者同士の繋がりを強固なものにしようと画策。恵帝4年（紀元前192年）に、自身の姪にあたる張氏を皇后に立てました。これは、恵帝と呂后の間に生まれた権力構造の歪みを示す出来事と言えるでしょう。

恵帝との関係、そして呂后の策略

呂后は張皇后に恵帝の子を産ませようとしましたが、恵帝は皇后を寵愛することがありませんでした。そこで呂后は、張皇后が妊娠したと偽り、後宮の女性が産んだ子を皇后の子として皇太子に立て、実母を殺害するという非道な手段に出ました。この事件は、呂后の権力に対する執念と、それによって犠牲になる人々の存在を浮き彫りにしています。

恵帝の死後

恵帝が亡くなると、皇太子が即位しますが、自分が張皇后の子ではなく、実母が殺されたことを知って呂后を恨むようになります。呂后は彼を廃位し、別の人物を皇帝に立てました。呂后の死後、陳平や周勃らの大臣が呂氏一族を滅ぼし、高祖の子である代王劉恒を皇帝に迎えました。これが文帝です。呂氏一族や少帝は殺害されましたが、張皇后は廃位された後、北宮に幽閉されるに留まり、文帝後元年に亡くなりました。

参考文献

班固著『漢書』巻2恵帝紀、巻3高后紀、巻97上孝恵張皇后伝

張皇后が登場する作品

テレビドラマ『劉邦の大風歌 -漢建国記-』（2009年、中国、演：夏露）
* テレビドラマ『美人心計〜一人の妃と二人の皇帝〜』（2012年、中国、演：スー・チン）

張皇后は、政治的な策略に巻き込まれ、自らの意志とは無関係に運命を翻弄された女性でした。彼女の生涯は、当時の権力闘争の激しさと、その中で生きた人々の悲哀を伝えています。

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