強情灸

強情灸（ごうじょうきゅう）

強情灸は、古典落語の中でも特に人気のある演目であり、元々は上方落語の「やいと丁稚」を基にしています。この演目は、主人公と友人の間で繰り広げられるユーモラスなやり取りが特徴で、時には笑い、時には共感を誘います。

あらすじ

物語の始まりは、主人公が友人に会うところからです。友人は、非常に強力で、その熱さによって評判の灸のお店に行った体験を語ります。それに対し、主人公はその自慢話に腹を立てて、「たかだか灸ごときで威張るな」と言います。

友人が熱さに耐えたことを自慢するのをみて、主人公は奥からもぐさを取り出し、自らの腕に山のように積み上げ、一気に点火します。熱さにじっと耐えながら、主人公は「石川五右衛門は茹でられたのに辞世の句を詠んだぞ」と、なんとか強がりを言いますが、ついには耐えきれずにもぐさを払い落としてしまいます。最後に友人が意地悪な質問を投げかけると、主人公は「五右衛門もさぞ熱かっただろう」と呟き、物語は締めくくられます。

お灸の種類

この作品に登場するお灸は、「有痕灸」と「無痕灸」の二種類があります。「有痕灸」は、もぐさを使用して火傷を作ることで患部を治す方法で、恐らく主人公が体験するのはこれです。一般に「無痕灸」よりも強い熱さが伴います。主人公が盛大に据えた灸は、通常は数回に分けて行うものを一度に据えているため、治療としてはあまり現実的ではなく、むしろ自傷行為に近い贅沢な耐え難い苦痛といえます。

サゲの変形

サゲの部分では、主人公がもぐさを払い落とさずに熱さに耐え、「石川五右衛門」を連発。その中で友人が質問をすると、引きつった顔で「五右衛門もさぞ熱かっただろう」と絞り出す形がよく見られます。また、勘違いによって、熱さに混乱し百人一首の歌を引用するパターンも名場面の一つです。

原版と江戸っ子気質

強情灸の元となった「やいと丁稚」は、お灸で叱責をする昔の話で、主が体験した熱さに対してたじろぐ様子が描かれています。一方、強情灸では全く違った演じ方となり、江戸っ子特有の我慢比べの愚かさが顕著です。特に、銭湯での男の強情を描いた小噺は、江戸っ子の実利主義と対極にある大阪人から見れば、ただの「狂気の沙汰」となるでしょう。

数に関するいくつかのこだわり

演者によって灸の数や、順番待ちの札の番号は異なることがありますが、特に最後尾の番号に「へ（屁）」を使うことが多いのが特徴的です。また、灸の数は通常30個から40個が基本で、均等に左右に据えることが求められることが多いです。

強情灸は、そのユーモア溢れるやり取りに加え、文化や風習を反映した作品として、古典落語の中でも多くの人々に愛されています。

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