強震観測網

強震観測網（K-NET, KiK-net）とは



強震観測網（K-NET, KiK-net）は、防災科学技術研究所によって整備・運用されている地震観測網です。この観測網は、地震による強い揺れ、すなわち強震動を正確に記録することを目的としています。特徴として、広範囲の揺れを捉えられるように、データが飽和しにくい「広ダイナミック・レンジの加速度型ディジタル強震計」を使用しています。

観測データはデータベース化され、断層破壊の解析や地震ハザード評価など、多岐にわたる研究や実務に活用されています。1996年の運用開始当初は、K-NET（全国強震観測網）とKiK-net（基盤強震観測網）が別々に運用されていましたが、2008年6月に統合されました。現在では、地震発生から数分でデータがインターネットを通じて利用できるようになっています。また、気象庁や観測点が設置された自治体にも、リアルタイムで震度情報が提供されています。

観測点は主に陸上に設置されていますが、相模湾の海底ケーブル式地震計も含まれています。

整備の背景



強震観測網の整備は、阪神・淡路大震災の教訓に基づいています。当時、強震動の分布や建物破壊メカニズムを解明するための十分な観測データが不足していたことが問題視されました。この反省から、1995年に制定された『地震防災対策特別措置法』に基づいて、「地震に関する基盤的調査観測計画」の一環として整備が開始されました。

整備以前は、東海地震の前兆現象観測を目的とした観測網が、気象庁や大学、防災科学技術研究所によって個別に運用されていました。そのため、観測網の地域的な偏りや観測能力の不均一さが課題でした。この問題を解決するために、均質な観測網の必要性が高まりました。

観測施設



K-NET（全国強震観測網）

全国に約1000箇所、約25km間隔で観測点が設置されています。主に地表に強震計が設置されており、建物の破壊を引き起こすような揺れを捉えることを目的としています。旧K-NETでは、観測データの解析に時間を要していましたが、新K-NETではIP網を利用し、迅速なデータ取得と公開が可能になりました。

KiK-net（基盤強震観測網）

全国に約700箇所、約20km間隔で観測点が設置されています。高感度地震観測網に併設されており、地表と地中（観測井戸底）の両方に強震計が設置されているのが特徴です。これにより、地表と地中の揺れの違いを捉えることができます。観測井戸は、通常100～200m程度の深さですが、地盤が悪い場所では1000m級になることもあります。設置場所は、地質や地形、周辺環境を考慮し、軟弱な地盤や断層破砕帯を避けて選定されます。

地震計

  • - 高感度地震計：固有周期1秒の3成分地震計で、地表と地中に設置されています。微細な揺れを捉える一方で、生活ノイズや自然現象の影響も受けます。
  • - 強震計：大きな地震でもデータが飽和しないように設計されており、高感度地震計と併設されます。
  • - 地中用地震計：水密耐圧性の容器に収納され、地中深くの微細な揺れを捉えます。

地震計の型式

  • - 1996年：K-NET95型（2000galまで計測可能）
  • - 2004年：K-NET02型、K-NET02A型（4000galまで計測可能）
  • - 2008年：KiK-net06型（4000galまで計測可能）
  • - 2013年：K-NET11型、KiK-net11型（8000galまで計測可能）
  • - 2020年：K-NET18型、KiK-net18型

2020年時点では、約1700台の地震計で観測が行われています。

記録の収録・回収



地震計は、揺れを検知すると自動的に記録を開始します。旧K-NETでは、記録の回収に手間がかかりましたが、K-NET02以降は、地震発生を検知すると自動的にセンターに接続し、記録を送信する機能が追加されました。

公開データ



観測データだけでなく、観測点の土質データも公開されており、より詳細な分析を可能にしています。また、強震観測網のデータにはDOIが付与されています。

新K-NETと旧K-NETの違い



統合前の旧K-NETと新K-NETでは、測地系や公開されるデータの一部が異なります。

  • - 旧K-NET：全国約1000箇所に強震計が設置され、地表の揺れを観測していました。
  • - KiK-net：高感度地震観測網に併設され、地表と地中の揺れを観測していました。

地震データ



地震発生から数分で、地震の速報値や最大加速度マップ、観測点ごとの波形データなどが公開されます。翌日以降には、気象庁が発表した震度3以上の地震や、月報に記載された震度2以上の地震データが、高感度地震観測網（Hi-net）や広帯域地震観測網（F-net）のデータと合わせて公開されます。これらのデータは、強震解析ソフト（SMDA）で解析できます。

強震モニタ



強震観測網のデータは、ウェブサイト「強震モニタ」でリアルタイムに可視化されています。地震の揺れを地図上に表示し、強さや伝わり方を色の変化で確認できます。このデータは、地震発生時の状況把握や防災対策に役立ちます。ただし、人工的な振動や気象現象も表示されるため、都市部では日常的に揺れが観測されることがあります。

汎用



強震観測網のデータは、新幹線などの公共交通機関の安全運行にも活用されています。地震発生時には、これらのデータを基に緊急停止措置が取られる場合があります。

脚注



  • - 防災科学技術研究所 強震観測網(K-NET,KiK-net)
  • - 日本地震学会ニュースレター 第72巻 第NL5号 シリーズ「新・強震観測の最新情報」（第1回）K-NET （第2回）KiK-net
  • - 日本地震学会ニュースレター 第70巻 第NL1号 シリーズ「新・強震動地震学基礎講座」（第3回）強震観測

関連項目




外部リンク



  • - 強震観測網(K-NET,KiK-net) - 防災科学技術研究所
  • - 新型KiK-net強震計の整備 (PDF)
  • - 強震観測について - 気象庁
  • - 強震観測事業推進連絡会議

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