弾丸を噛め

『弾丸を噛め』（原題: Bite the bullet）は、1975年に公開されたアメリカ合衆国の西部劇映画です。リチャード・ブルックス監督・脚本による作品で、第48回アカデミー賞では録音賞と作曲賞にノミネートされました。

物語は、1906年のアメリカ西部を舞台に、新聞社ウェスタン・プレス主催の2000ドルの賞金が懸けられた、西部横断レースを描きます。主人公クレイトンは、動物を愛する青年。当初は富豪パーカーの愛馬をレースのスタート地点まで輸送する仕事を請け負っていました。しかし、道中で迷子の子馬を保護したことで列車に乗り遅れ、スタート地点まで100キロを走って向かうハメになります。

レース前夜、何とかスタート地点に到着したクレイトンでしたが、馬を疲れさせたことを咎められ、パーカーから解雇されてしまいます。絶体絶命の状況の中、彼は旧友マシューズと再会。二人の友情と、レース出場者たちの個性豊かな面々が織りなすドラマが展開していきます。

レースは、様々な困難と出会う過酷な旅路です。出場者たちは、砂漠、渓谷、そして危険な鉄道工事現場といった過酷な環境を克服しようと奮闘します。クレイトンは、レース中に歯痛に苦しむメキシコ人を助けたり、盗賊から女性出場者ケイトを救出したりと、幾多の困難を乗り越えていきます。

クレイトンの旅路は、単なるレースへの参加ではありません。彼は、米西戦争での経験や、愛する妻との別れといった過去のトラウマと向き合いながら、友情、愛情、そして人間の弱さや強さを痛感していきます。

レースの途中で、クレイトンは様々な人物と出会います。旧友マシューズとの再会、女性出場者ケイトとの出会い、そして、名前も知らないまま亡くなっていく出場者ミスターとの別れ。これらの出会いは、クレイトンの生き方、そして人生観に大きな影響を与えていきます。

レース終盤では、囚人たちが働く危険な鉄道工事現場で、ケイトの恋人が脱走騒ぎを起こします。クレイトンは、メキシコ人を負傷させる事態の中、彼にかけた「弾丸を噛め（痛みをこらえろ）」という言葉が、この映画のタイトルにもなっています。

最終的に、クレイトンはレースを完走しますが、ゴール直前で力尽きてしまいます。しかし、彼は諦めず、馬を引きながらゴールを目指します。そして、彼に追いついたマシューズと共に、二人の友情を象徴するかのように、並んでゴールを迎えます。

本作は、壮大な西部劇のスケール感と、人間ドラマの深みを併せ持つ作品です。クレイトンをはじめとする個性豊かな登場人物たちの生き様、そして、彼らが織りなす物語は、観客に忘れられない感動を与えます。

製作面では、クレイトン役には当初チャールズ・ブロンソンが検討されていましたが、最終的にジーン・ハックマンが起用されました。撮影はニューメキシコ州とネバダ州を中心に、機関車のシーンはニューメキシコ州とコロラド州間の鉄道、その他のシーンはカーソン国有林、ホワイトサンズ国定記念物、ミード湖などで撮影されました。

批評家の評価は分かれています。ニューヨーク・タイムズのヴィンセント・キャンディーは酷評しましたが、ロジャー・イーバートは好意的な評価を与えています。イーバートは、本作が西部の神話を再構築し、再確認する作品であると高く評価しました。

『弾丸を噛め』は、単なる西部劇映画の枠を超えた、人間の生き様を深く描いた感動的な作品です。その壮大なスケールと人間ドラマの深みは、多くの観客を魅了し続けています。

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