当日版権システム

当日版権システムとは

当日版権システムは、ガレージキット展示即売会において、アマチュアが版権元から簡易的な商品化許諾を得て、ガレージキットを販売できる制度です。このシステムは、イベント開催期間中および会場内に限って、著作権のあるキャラクター等のガレージキットを販売することを許可するもので、アマチュアによるファン活動の一環として、商業的な側面も持つ独特な仕組みです。

概要

アマチュアがガレージキットを製作・販売する場合、通常は著作権・商品化権を持つ版権元から許諾を得る必要があります。当日版権システムでは、イベント主催者を通じて版権元から簡易的な許諾を得ることで、イベント会場内でのみ販売が可能となります。この許諾には、略式の書類提出や簡単な写真監修、版権料の支払い、商品サンプルの提出などが含まれますが、版権元によってはこれらの手続きを省略する場合もあります。

この制度は、企業間で行われる商品化許諾プロセスとは異なり、手続きが大幅に簡略化されています。これにより、アマチュアでも比較的容易にガレージキットの販売が可能になります。ただし、イベント会場外での販売や、予約販売、後日発送などは禁止されています。また、許諾を得ていないガレージキットの販売や展示も認められません。

当日版権システムは、ワンダーフェスティバルをはじめ、トレジャーフェスタ、C3AFAマーケットなどの即売会で採用されています。

歴史

導入前

当日版権システムは、1980年代末のワンダーフェスティバルで、当時の主催者であったゼネラルプロダクツによって段階的に導入されました。

1980年代前半には、ガレージキットは模型店を通じて販売される程度で、そのほとんどが版権元に無許可の「無版権商品」でした。1984年にスタートしたワンダーフェスティバルでも同様で、法的には著作権法違反の無許可販売でしたが、規模が小さかったため、版権元からは同人誌と同様のファン活動として放置されていました。

ワンダーフェスティバルでは、個人的なファン活動としてガレージキットを製作・配布する個人、正規の商品化権を取得したガレージキットメーカー、模型店、コレクターなどが同じ「ディーラー」として扱われていました。

導入に至る経緯

ガレージキット市場の拡大とともにワンダーフェスティバルも拡大し、無版権ながらファン活動としてガレージキットを製作・配布するアマチュアディーラーと、正規の商品化権を取得したガレージキットメーカーとの間に摩擦が生じました。また、模型雑誌上では、大手玩具メーカーであるバンダイと一部のガレージキットメーカーが版権意識の向上を促すキャンペーンを展開しました。

このような状況の中、ゼネラルプロダクツは各版権元と個別に交渉し、アマチュアディーラーがイベント当日、会場内に限り商品として展示・販売することについての了解を取り付けました。これが当日版権システムの始まりです。

当日版権の原点

当日版権制度の原点は、ゼネプロがバンダイから二次版権を得て、仮面ライダーのレプリカマスクを製作・販売していたことにあります。武田康廣氏は、この二次版権のシステムをガレージキットおよびワンフェスの現状に合わせてアレンジすれば、権利問題を解消できると考えました。

現在抱える問題点

版権元の優位性

本来、版権は著作権者が企業に対して商品化を許諾するシステムですが、アマチュアディーラーは販売数が少ないため、版権元にとって大きな利益にはなりません。このため、当日版権システムは版権元の厚意によって成り立っており、版権元の意向が大きく影響します。そのため、当日版権を認めない版権元や、特定のイベントのみに限定されることもあります。

版権元の理解不足

近年では、版権元がガレージキット製作の実態を理解していないケースも見られます。版権を許諾する代わりに、大量の塗装済み完成品の提出を求める例も散見されます。

ディーラー側のモラルの問題

一部のディーラーによる、申告と異なる内容での販売や、サンプル提出の不備など、モラルの低さも問題となっています。

版権自体の意義

「版権」という言葉は、著作権法が制定される前の相当する法律の名称であり、法的に「版権」とは何なのか、という問題も存在します。

ライセンスニューウェーブ

ワンダーフェスティバルでは、一部の著作権者の作品について、特別に「ライセンスニューウェーブ」という当日版権制度が設けられています。これは、事前の販売内容の申請と版権料の支払い、当日のサンプル提出だけで、原型審査なしで販売が認められる制度です。申請も開催約1ヶ月前と、通常の当日版権システムに比べて大幅に緩和されています。

対象作品には、新谷かおる氏、和田慎二氏の作品の一部や、横山宏氏の『マシーネンクリーガー』などがあります。また、ワンダーフェスティバルのマスコットキャラである「ワンダ＆リセット」については、事前申請を行うだけで版権料なしで販売できる「ライセンスフリー」となっています。

当日版権システムは、アマチュアによるガレージキット製作・販売を支える重要な制度ですが、多くの問題を抱えているのも事実です。今後もこの制度がどのように発展していくのか、注目されます。

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