当麻喜弘

当麻喜弘（とうま よしひろ）氏は、1933年に生まれ、2021年に逝去した日本の電気工学者です。ディジタル回路や信頼性工学、特にフォールトトレラントシステムの研究において顕著な業績を残し、教育者としても多大な貢献をしました。東京工業大学名誉教授、東京電機大学学長、日本信頼性学会会長といった要職を歴任し、その功績により紫綬褒章、瑞宝中綬章を含む多くの栄誉に輝きました。

経歴と学術活動

当麻氏の学術キャリアは、1956年に東京工業大学理工学部電気工学科を卒業したことから始まりました。その後、同大学大学院理工学研究科電気工学専攻に進み、1961年に博士課程を修了して工学博士号を取得しています。同年に東京工業大学の助手として研究者の道を歩み始め、1963年には助教授に昇任しました。そして1975年には同大学の教授となり、長年にわたり電気工学、特に後にはフォールトトレラントシステム研究を専門とする分野で教育と研究の第一線に立ちました。この間、多数の研究者を育成し、日本の電気工学分野の発展に寄与しています。

1994年に東京工業大学を退官し、名誉教授の称号を得ました。同年に東京電機大学へ移り、教授として引き続き教育・研究活動に従事します。2002年には東京電機大学の学長に就任し、大学運営においてもリーダーシップを発揮しました。

学会活動においても非常に活発であり、1998年には日本信頼性学会の会長を務め、国内における信頼性工学の研究推進と普及に貢献しました。IEEEライフフェロー、電子情報通信学会フェロー、情報処理学会フェローといった国内外の主要学会におけるフェローシップは、彼の学術的な業績とコミュニティへの貢献が高く評価されていたことを示しています。

主な功績と受賞

当麻氏の研究は、ディジタルシステムの設計と信頼性に関するものであり、特にシステムが故障しても機能を維持しようとするフォールトトレラントシステムの研究は、現代の情報化社会を支える基盤技術として極めて重要です。これらの研究活動や教育への貢献は高く評価され、数々の賞を受賞しています。

主な受賞歴としては、電子情報通信学会著述賞、情報処理学会功績賞、大川出版賞などがあり、これらは彼の学術的な貢献や著作を通じた知識普及の努力が認められたものです。また、国際的な評価も高く、1992年には情報処理国際連合 (IFIP) よりSilver Coreを受章しています。

さらに、国家レベルでの功績も認められ、1999年には学術研究における優れた業績に対して贈られる紫綬褒章を受章。2009年には長年の公務に対する功労として瑞宝中綬章を受章しています。これらの栄誉は、当麻氏が日本の電気工学、特に情報科学と密接に関連する分野において、研究、教育、そして社会貢献の両面で傑出した功績を残したことを証明しています。

著書

教育者としても熱心であった当麻氏は、専門分野に関する多くの優れた教科書や専門書を執筆しています。これらの著書は、長年にわたり多くの学生や技術者によって学びの基盤とされました。

代表的な著書には、初期のディジタル回路の基礎を扱った『ディジタル回路の論理設計入門』（1961年）や『パルス技術入門』（1965年）、より高度な内容を含む『順序回路論』（1976年）や『スイッチング回路理論』（1986年）があります。また、共著書として『基礎電気回路例題演習』（1963年）、『順序機械』（1983年）、『スイッチング回路理論演習』（1988年）などがあり、幅広い教育ニーズに応じた著作活動を展開しました。晩年には『入門電子回路』（1997年）といった、より多くの読者を対象とした入門書も執筆しており、その教育への情熱は生涯続きました。

当麻喜弘氏は、ディジタル回路、フォールトトレラントシステム、そして信頼性工学といった分野における日本の研究・教育を牽引した偉大な電気工学者であり、その功績は長く記憶されるでしょう。

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