形影 菊池寛と佐佐木茂索

形影 菊池寛と佐佐木茂索

『形影 菊池寛と佐佐木茂索』は、松本清張が手掛けた評伝であり、1982年に『文藝春秋』に連載され、その後単行本として発表されました。この書籍では、文藝春秋の創立に貢献した主な二人、菊池寛と佐佐木茂索の生涯や業績を追い、彼らの相関関係を深く考察しています。

タイトルに含まれる「形影」という言葉は、菊池寛の著作『半自叙伝』から引き取られたものであり、彼らの関係が常に密接であったことを示しています。この評伝を通じて、両者の創造力やその後の影響が浮き彫りにされるのです。

主要テーマ

本書では、著者松本清張が特に立項は行っていないものの、さまざまなトピックが取り上げられます。以下にその要点を紹介します。

• - 学生時代の菊池寛: 高松中学校から京都帝国大学にかけての学生時代や、当時の環境が彼の成長に与えた影響について。
• - 芥川龍之介との関係: 菊池が文学界でどのように芥川と交わり、互いの作品にどう影響を与えたのかについて、具体例を挙げて分析しています。
• - 小説家としての軌跡: 菊池寛が作品を通じて成功を収める過程を辿り、文藝春秋の創刊に至るまでの経緯やライバル誌との緊張関係についても触れています。
• - 文藝春秋の発展: 創刊から初期の動向を観察し、菊池と佐佐木がどのようにその未来を築いたのかを描写しています。
• - ジャーナリズムへの移行: 菊池は作家だけでなく、ジャーナリストや出版社経営者としての顔も持つため、これらの役割が彼に与えた影響についても考察が加えられます。
• - 佐佐木茂索の貢献: 佐佐木自身の文学業績や、彼と芥川との関係を解説し、その後の人生を見つめ直します。

二人の間柄

特に興味深いのは、菊池と佐佐木の個人的かつ職業的な関係です。二人は長い間、互いに支え合いながら文藝春秋を育ててきたと言えます。彼らの友情や競争、さらには業務上のトラブルについても詳細に触れています。例えば、菊池の選挙出馬や文藝春秋の広告部における不正事件は、彼らの絆に影響を及ぼしかねない重大な出来事です。

その他のエピソード

本書では、将棋やピンポンなどの逸話も交えながら、菊池と佐佐木の人間味やユーモアを感じさせる場面が描かれています。これにより、両者の個性がより立体的に浮かび上がります。

評価と影響

松本清張はこの作品から、文学界における菊池寛の重要性を再認識し、他の作家たちにも感銘を与えました。たとえば、井上ひさしは、菊池の戯曲に自らの考えを織り交ぜていることを指摘し、作品の深みを評価しています。また、紅野敏郎は、松本清張の文学史への取り組みを評価しながら、単に古い資料をまとめただけではない独自の魅力があることに言及しています。

本書は、文藝春秋の設立や二人の作品が与えた影響を理解するための重要な資料として評価されるべき一冊です。

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