影女

影女（かげおんな）

影女は、江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕が描いた妖怪画集『今昔百鬼拾遺』に登場する妖怪です。石燕の解説によれば、物の怪の棲む家に、月夜の光によって障子などに女性の姿の影が映し出される現象を指します。

石燕の描く影女

『今昔百鬼拾遺』における影女は、障子に映る黒い女性のシルエットとして描かれています。具体的な姿形は不明瞭であり、見る者に様々な想像を掻き立てる、どこか神秘的な雰囲気を漂わせています。

山形県の怪談

伝記作家・山田野理夫の著書『東北怪談の旅』には、山形県に伝わる影女の怪談が収録されています。以下はその内容です。

昔、増田という人物が、鶴岡城下に住む友人・酒井吉左衛門の家を訪れました。家の近くまで来た時、窓から若い女性の姿が見えました。家に入り、増田が吉左衛門と酒を酌み交わしていると、障子越しに女性の影が現れました。吉左衛門は、それが影女であると告げました。話しているうちに、今度は庭に女性の姿が現れましたが、家の中には決して近づいてこなかったといいます。

この怪談における影女は、実体を持たない影のような存在であり、人の目に触れるものの、直接的な危害を加えることはありません。しかし、その不可解な存在は、人々に不安と恐怖を与えたことでしょう。

影女の解釈

影女は、古くから日本に伝わる妖怪の一つであり、その存在は、人々の心の奥底に潜む不安や恐怖の象徴であると考えられます。実体のない影として現れる影女は、人間の目に映るものの、決して触れることのできない、不確かな存在です。そのため、人々は影女に対して、得体の知れない恐怖を感じたのかもしれません。

また、影女は、社会的な規範から逸脱した女性の象徴であるという解釈も存在します。姿は見えるものの、決して近づいてこない影女は、男性社会において抑圧された女性たちの姿を投影しているとも考えられます。

現代における影女

現代社会においては、影女のような妖怪は、もはや迷信として忘れ去られつつあります。しかし、その存在は、現代人の心にも、潜在的な不安や恐怖として残っているのではないでしょうか。例えば、夜道を歩く時に感じる漠然とした不安、誰もいないはずの部屋に感じる気配、それらは、もしかしたら影女の仕業かもしれません。

影女は、単なる迷信ではなく、人間の心の奥底に潜む感情を映し出す鏡のような存在なのかもしれません。

関連項目

日本の妖怪一覧
シャドーピープル

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