役者評判記

役者評判記について

「役者評判記」とは、江戸時代に発表された歌舞伎役者に対する批評書で、一般的には「歌舞伎評判記」として知られています。この書物は、当時の役者たちの芸を細かく分析し、評価するために作られました。その成立背景や構成について詳しく見ていきましょう。

発刊の経緯

「役者評判記」は、1656年に刊行された男色をテーマにした歌舞伎若衆の批評書「役者の噂」の人気を受けて誕生しました。しかし現存する最古の評判記は、1660年に発行された「野郎虫」とされています。その後、貞享年間から「役者評判記」の出版が始まり、さまざまな作品が登場しました。この時期に発表された「野良立役舞台大鏡」や「役者大鑑」という書籍により、役者の技術やスタイルに対する批評の仕組みが確立されていきます。

体裁の確立

特に1699年に出た「役者口三味線」では、評判記の体裁が整いました。これは、京都・江戸・大坂ごとに分けた3巻3冊の形式で構成されており、序文には浮世草子の影響を受けた短編小説が添えられています。本文では、各役柄ごとに役者の技術に関する評価が述べられ、演目に関連する挿絵も交えられています。これにより、読者は視覚的にも楽しむことができ、役者の魅力をより一層感じることができました。さらに、各役者は上上吉、上上、中の上、中などと位付けされ、合評形式で評価が行われるため、一人の役者でも様々な視点から論じられていました。

その後の変遷

この評判記は、江戸時代を通じて毎年出版され続けました。発表された中には、位の細分化や上上吉以上の称号が設けられたものもあり、新たに名古屋の芝居に関する評判記が生まれ、特に江戸の役者に焦点を当てたものも発表されています。このように「役者評判記」は、各地域や時代に応じて進化し続けたのです。明治維新の後も、約明治20年頃まで「俳優評判記」として発表され、当時の演劇の状況を伝える重要な資料とされています。

執筆者と影響

「役者評判記」の執筆者には、元禄から享保期の江島其磧を除き、ほとんど名前が確認されていないというのも興味深い点です。この作品は江戸時代の演劇や文学だけでなく、国語史や出版史においても重要な資料とされています。そのため、学術的にも高く評価されています。

参考文献

「役者評判記」の研究には、多くの資料が存在します。特に岩波書店から刊行された『歌舞伎評判記集成』や『江戸名物評判記案内』、そして『元禄俳優伝』は、このテーマに興味を持つ人々にとっての重要な参考文献です。これらの書籍を通じて、江戸時代の歌舞伎やその評判記についての理解を深めることができるでしょう。

このように「役者評判記」は単なる批評書にとどまらず、歴史的な背景を持ち、その時代の文化や風俗を知るための貴重な資料であると言えます。

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