彼のオートバイ、彼女の島

『彼のオートバイ、彼女の島』

概要

『彼のオートバイ、彼女の島』は、片岡義男によって1977年に発表された恋愛小説であり、後に映画化された作品です。小説は、角川書店の文芸雑誌『野性時代』に掲載され、同年に単行本として出版されました。1980年には角川文庫にも収められ、作品は長年にわたり多くの読者に愛され続けています。小説のカバーには、「夏はただ単なる季節ではない。それは心の状態だ」という詩の一節をもじった言葉がキャッチコピーとして使われており、恋愛や青春のテーマを強調しています。

本作の主人公は、音楽大学に通う学生の橋本巧（通称コオ）で、彼はアルバイトでプレスライダーをしています。コオはオートバイ（カワサキの650RS-W3）を愛しており、このオートバイは彼の人生の一部として描かれています。物語は、信州の美しい初夏を舞台に、コオと瀬戸内海の離島出身の女性、白石美代子（通称ミーヨ）との偶然の出会いから始まります。

映画化とあらすじ

1986年、映画化された際には、大林宣彦が監督を務め、原田貴和子がヒロインのミーヨ役を演じました。映画版でも、コオとミーヨの出会いから恋愛が描かれており、実際にオートバイに乗るシーンが印象的です。物語は、信州での偶然の出会いから始まり、二人は手紙や電話でのやり取りを重ねていきます。

ミーヨはお盆の時期にコオを島に招待し、彼がオートバイで訪れることになります。島での休暇中、ミーヨはオートバイに対する興味を持ち始め、コオも彼女に運転を教えます。その後、二人は同棲生活を始めることになりますが、ミーヨの大型免許取得を巡る思惑にはすれ違いが生じます。このことで、二人の関係が次第にぎくしゃくしていく様子が描かれています。

映画のクライマックスでは、ミーヨが大型免許を取得し、オートバイの運転に意欲を燃やす中で、不安定な二人の関係が試されます。最終的な結末は、オートバイと島、そして二人の愛情を絡めた感動的な展開を迎えます。

作品のテーマと評価

この物語は、恋愛だけでなく、自由や成長といったテーマも描かれています。オートバイという象徴は、二人の心の動きを鮮やかに表現しており、同時に同世代のライダーたちにとってのバイブル的存在となっています。作品は、原作と映画それぞれに独自の魅力を持ち、特に若い世代の間での人気を集めています。

なお、本作は優れた脚本と演技により、数々の映画祭で高い評価を得ました。また、原田貴和子は本作での演技により多くの賞を受賞し、その存在感を示しました。更に、音楽の使い方も巧妙で、随所に流れる楽曲が物語の感情を高め、視聴者の心を引きつける要素となっています。

書誌情報

• - 初版：1977年、角川書店
• - ISBN：4-048-72183-6（単行本）
• - ISBN：4-041-37109-0（文庫版）

本作は後の世代においても影響を及ぼしており、今なお多くの人々に語り継がれている名作です。

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